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【高萩市】創業・起業のための地域データガイド|人口・産業・支援制度でわかるビジネス環境

佐藤

茨城県北部、日立市の北に隣接する高萩市は、同じく日立市に接する北茨城市としばしば一括りにされますが、中身は異なります。日立市への通勤者3,259人に対し、日立市から高萩市へも2,038人が通勤する双方向の関係にあり、工業団地には医薬品から鍛造、食品まで27事業所が業種分散して立地します。観光は花貫渓谷の紅葉期に人出が集中するという明確な繁閑差を持つのも特徴です。人口・産業・企業・支援制度のデータから、創業予定者の視点で高萩市を整理しました。

この記事でわかること

  • 高萩市の人口規模・年齢構成と、そこから読み取れる客層
  • 日立市との双方向の通勤流動から見た「対等に近い」産業関係
  • 27事業所が業種分散する工業団地と、農業を含む地域産業の構造
  • 花貫渓谷の紅葉期に集中する観光の繁閑差と、創業時の商品設計への影響
  • 創業時に使える補助金・融資・相談窓口の具体的な金額と窓口

1. 高萩市の基本プロフィール

項目 データ 基準時点
人口 25,028人(県内市町村44団体中35位) 令和7年10月1日・国勢調査速報
世帯数 11,068世帯(県内34位) 同上
人口増減(令和2年比) −2,671人(−9.6%) 同上
1世帯当たり人員 2.26人 同上
面積 193.55km² 令和8年1月1日現在
人口密度 127.8人/km² 令和8年4月1日現在
年齢構成 年少8.5%/生産51.9%/高齢39.7% 令和7年10月1日推計
昼夜間人口比率 93.2(県内26位) 令和2年国勢調査
外国人住民 285人 令和7年6月30日現在
1人当たり市町村民所得 294.8万円(県内40位) 令和5年度

創業時の目線:人口2.5万人の市ですが、日立市との人の行き来、工業団地の従業者、紅葉期の観光客という、居住人口だけでは見えない需要層が重なっています。まず「誰を客にするか」を分けて考える必要があります。

2. 人口データで読む高萩市

2-1. 人口規模と推移

令和7年国勢調査の速報値で、高萩市の人口は25,028人。令和2年から2,671人(−9.6%)の減少で、茨城県全体(−2.6%)や隣接する北茨城市(−8.1%)より減少幅が大きくなっています。

令和6年(1〜12月)の市統計では、出生87人・死亡464人で自然減377人、転入687人・転出856人で社会減169人、合計546人の減少でした。自然減が社会減の倍以上で、減少の主因は出生数の少なさです。

創業時の目線:人口減少は自然減主導であり、短期間で反転しにくい構造です。居住者だけを客にする事業は、固定費を抑えた設計か、市外からの通勤者・観光客を取り込む設計のどちらかを最初から組み込む必要があります。

2-2. 年齢構成 ― 誰が住んでいる街か

令和7年10月1日時点の推計では、年少人口(0〜14歳)8.5%、生産年齢人口(15〜64歳)51.9%、老年人口(65歳以上)39.7%です。高齢化率39.7%は高い水準で、通院・買い物・移動を支えるサービスの重要性が増しています。

創業時の目線:高齢者向けの配達・訪問・送迎サービスに需要が見込める一方、生産年齢人口も5割を超えており、工業団地の従業者を対象にした平日型の需要も無視できません。

2-3. 世帯構成 ― 単価と客層を決める要素

1世帯当たり人員は2.26人(茨城県平均2.29人)で、県平均をわずかに下回ります。人口25,028人に対し世帯数11,068世帯で、少人数世帯を前提とした商品量・サービス設計が現実的です。

2-4. 昼間人口と日立市との双方向通勤 ― 「一方的な流出」ではない

令和2年国勢調査(従業地・通学地集計)によると、高萩市の昼間人口は25,802人、夜間人口27,699人で、昼夜間人口比率は93.2(県内26位)。夜間人口より昼間人口が1,897人少なく、数字だけ見れば「日立市方面へ通勤者が出ていく街」に見えます。

しかし通勤・通学の内訳を見ると、単純な一方通行ではありません。

方向 通勤・通学計 うち就業者
高萩市 → 日立市 3,859人 3,259人
日立市 → 高萩市 2,231人 2,038人
純流出(差引) 1,628人 1,221人

(いずれも令和2年10月1日現在)

日立市からも2,038人の就業者が通勤しており、日立市の企業に勤める人が高萩市に住み、高萩市の工業団地で働く人が日立市から通うという、人材の往復が成立しています。JR高萩駅の1日平均乗車人員は2,051人(令和6年度、定期外550人・定期1,500人)です。

創業時の目線:一方的な通勤流出の街であれば「平日昼は人がいない」で終わりますが、高萩市は日立市から通ってくる人もいる街です。高萩駅周辺や高萩IC沿いで、双方向の通勤客を想定した朝食・弁当・時短サービスには、他の県北自治体より広い顧客層が見込めます。

2-5. 外国人・特徴的な層

外国人住民は285人(令和7年6月30日現在)。国籍別ではベトナム91人・インドネシア33人・ネパール29人・フィリピン28人・中国23人が上位で、総人口とは基準日が異なるため正式な人口比は算出していません(参考値は約1.1%)。

創業時の目線:国籍が分散しており、特定コミュニティ向けの単独業態が単独で成立する規模とは言い切れません。工業団地の従業者としての外国人労働者の生活支援(食材・通信・住居)に実需があるかは、現場で確認する価値があります。

3. エリア別の特徴 ― どこで開業するかで別のビジネスになる

高萩市は昭和29年11月23日、高萩町・松岡町・高岡村・黒前村および櫛形村の一部が合併して発足し、以降は平成の大合併を経ていません。市内は性格の異なる3地区に大別できます。

  • 高萩地区:JR高萩駅、市役所、中心市街地、海岸線を含む市の顔となるエリア。市は「高萩駅周辺地区再整備基本構想」を策定し、令和8年度には再整備基本計画の策定を進めています。
  • 松岡地区:城下町としての歴史資源に加え、県北医療センター高萩協同病院、常磐自動車道高萩IC、上手綱側の工業団地が集まる、産業と生活が同居するエリアです。
  • 高岡地区:花貫渓谷を含む山間・農林業地域。市内で最も観光と農業に比重が置かれています。

なお、中心市街地の空き店舗率・歩行者通行量は一次資料で確認できなかったため、本記事では扱いません。

観光は花貫渓谷の紅葉期に極端に集中

高萩市の年間観光入込客数は309,300人(令和6年1〜12月、前年比98.1%)。月別の内訳を見ると、繁閑差がはっきり表れます。

入込客数
1月 3,800人
2月 3,600人
3月 4,600人
4月 23,000人
5月 7,100人
6月 6,300人
7月 39,100人
8月 19,400人
9月 9,000人
10月 56,900人
11月 79,900人
12月 56,600人

(令和6年1〜12月、茨城県観光客動態調査)

10〜12月の3か月で193,400人と、年間の6割以上がこの時期に集中し、11月は79,900人と単月で最多です。中心は花貫渓谷の紅葉で、長さ約60mの汐見滝吊り橋が象徴的なスポット。令和7年の紅葉まつり(11月開催)には約51,100人が訪れました。7月は高萩海水浴場の海開き期間(令和6年7月13日〜8月18日)を含み、利用者は10,961人(前年比296.2%)と急増しています。

隣接する北茨城市が五浦海岸・岡倉天心ゆかりの文化施設という通年型の観光資産を持つのに対し、高萩市の観光は紅葉期にほぼ一極集中する構造です。花貫渓谷そのものの年間来訪者数や常設施設ごとの来場者数は一次資料で確認できておらず、紅葉まつりの人出(約51,100人)と市全体の観光入込客数(309,300人)を混同しないよう注意が必要です。

創業時の目線:花貫渓谷周辺で飲食・物販・体験を検討する場合、通年営業を前提にすると10〜12月以外の稼働率が課題になります。紅葉期に売上を集中させる期間限定型の営業や、閑散期は地元客・法人向けに切り替える二毛作的な設計を最初から組み込む必要があります。

主要商業施設は、イオン高萩店(安良川)、ベイシア高萩モール店(下手綱、平成11年3月開業)、カインズ高萩店(下手綱、令和元年12月11日改装開店)です。

4. 産業構造 ― この街のお金はどこから来るのか

4-1. 産業別の就業者構成

令和2年国勢調査ベースで、第1次産業2.94%(360人)、第2次産業38.71%(4,741人)、第3次産業58.35%(7,145人)(分類不能63人を除く分類可能就業者計12,246人)。第2次産業比率38.71%は、水戸市(18.65%)はもちろん県平均と比べても高く、製造業の存在感が大きい街であることが分かります。

4-2. 事業所数・従業者数

市全体の事業所数・従業者数について、経済センサス等の確定値を一次資料から確認できなかったため、本記事では掲載しません。

4-3. 商業(卸売・小売)の市場規模

年間商品販売額は290億円(令和2年、茨城県「市町村のデータ」)。県公式ページの総額のみを使用しており、卸売・小売の内訳は掲載しません。

創業時の目線:市域内の商業規模は決して大きくありません。日用品・食品などの最寄り品は居住人口ベースで冷静に見積もり、専門性の高いサービスや通勤・観光による流入客を見込める業態で商圏を補う発想が必要です。

4-4. 製造業・工業団地 ― 業種が分散した産業構造

製造品出荷額等は1,462億円(令和5年、従業者4人以上の事業所)。市の工業団地企業名簿(令和7年5月現在)には、団地内25事業所・団地外2事業所の計27事業所が掲載されています。

団地 事業所数
松久保 6
手綱 6
手綱B 9
赤浜 3
中郷 1
団地外 2
27

業種は医薬品、臨床検査薬、建材、鍛造、精密金型、培土、食品、電子部品など多岐にわたり、特定の1〜2業種に偏っていません。市の企業名簿では日立製作所本体の工場は確認できず、市内本店のHAXコーポレーション(日立建機50%・アンテックス50%出資の合弁会社)が「日立系」として立地する程度で、単一企業グループへの依存度は高くありません。

創業時の目線:業種が分散している分、特定業界の景気に工業団地全体が引きずられるリスクが相対的に低いといえます。設備保全、物流、採用支援、IT導入など、業種を問わず使われるBtoBサービスは、複数の業種に同時に営業をかけられる点が高萩市の強みです。

農業産出額は12.6億円(令和4年)。主要品目は肉用牛3.9億円・乳用牛3.6億円・米2.4億円・野菜1.9億円で、畜産が中心です。

5. 高萩市を代表する企業 ― 取引先候補として

市内に登記上の本店を置くことを確認した企業です(gBizINFO・法人番号公表サイト、令和8年8月8日確認)。

企業名 所在地 主な事業
株式会社ナジコ製作所 赤浜412 ドライブシャフト、熱交換器等
助川電気工業株式会社 上手綱3333-23 温度センサー、加熱機器等
株式会社シンニッタン 上手綱3333-3 鍛造品等
高萩商事株式会社 大和町4-3-1 燃料、運送、自動車関連等
茨城くみあい培土株式会社 上手綱2146 培土製造
株式会社HAXコーポレーション 赤浜2071-17 建設機械用旋回ベアリング等
株式会社エムディー精密 上手綱3641-48 精密金型、精密プレス加工等

※株式会社HAXコーポレーションは日立建機50%・アンテックス50%出資の合弁会社です。日立製作所本体の子会社ではありません。

本社は市外にありますが、市内に工場・事業場を置く主な進出企業です。

企業・拠点 本店所在地
アステラス製薬株式会社 高萩事業場 東京都中央区
生化学工業株式会社 高萩工場 東京都千代田区
DAIKEN株式会社 高萩工場 富山県南砺市
株式会社アンテックス 高萩工場 東京都大田区
極東製薬工業株式会社 高萩工場 東京都中央区
株式会社永谷園フーズ 茨城工場 東京都港区
日本ケミコン株式会社 高萩工場 東京都品川区

創業時の目線:本店企業7社と進出企業7社を合わせると、鍛造・精密金型といった加工系から医薬品・食品まで幅が広く、営業先を1業種に絞らずに開拓できます。単一の企業城下町ではないため、特定企業の設備投資縮小がそのまま地域経済全体に直結しにくい点も、BtoB創業を検討するうえでの安心材料です。

6. 創業支援制度とお金の話

6-1. 特定創業支援等事業(まず最初に取るべき証明)

高萩市の創業支援等事業計画は平成26年6月26日に国認定され(計画期間は令和13年3月31日まで)、市と高萩市商工会が実施機関です。証明の要件は1か月以上・4回以上の支援を受け、経営・財務・人材育成・販路開拓を学び、創業スクールでは出席率80%以上が必要です。年間目標は創業支援対象者10人・創業者2人です。

証明取得による主な優遇は次のとおりです(中小企業庁「2026年度版 中小企業施策利用ガイドブック」)。

優遇内容 具体的な効果
登録免許税の軽減 税率0.7%→0.35%(株式会社15万円→7.5万円、合同会社6万円→3万円)
創業関連保証の特例 事業開始6か月前から利用対象
小規模事業者持続化補助金〈創業型〉 補助上限200万円
日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金の貸付利率引き下げ対象(適用利率は申込時条件による)

窓口:高萩市観光商工課 商工G(本町1-100-1、市役所2階)0293-23-7316

6-2. 高萩市独自の補助金

制度名 内容 令和8年度の状況
高萩市創業・スタートアップ支援補助金 創業スクール修了者によるビジネスプランコンテストのグランプリ受賞者が対象。上限50万円 令和8年度当初予算に50万円計上。補助率・対象経費・一般公募の有無は市への確認が必要
令和8年度たかはぎ創業塾 令和8年8〜9月の全5日開催 申込期限は令和8年8月10日

「創業スクール修了→ビジネスプランコンテスト→グランプリ受賞」という選抜プロセスが前提な点が、他市に多い定額補助と異なります。

6-3. 融資・制度融資

制度 限度額 条件
自治金融 1,000万円 融資期間7年以内、年利2.00%、信用保証料率年0.45〜1.90%
振興金融 2,000万円 年利2.50%(融資期間は資料からは確認できず)

(令和8年4月1日現在)保証料補助・利子補給の詳細は未取得です。申込窓口は高萩市商工会(0293-22-2501)。

創業時の目線:自治金融・振興金融の要件詳細は未確認の部分があるため、開業資金の主軸には据えず、まず県の創業支援融資や日本政策金融公庫を軸に資金計画を立て、市の制度は補完として商工会に確認するのが安全です。

6-4. 相談窓口・コワーキング

窓口 所在地 連絡先
高萩市商工会 下手綱2000 0293-22-2501(平日8:30〜17:15)
高萩市観光商工課 商工G 本町1-100-1 市役所2階 0293-23-7316

コワーキング:起業・創業支援スペース「起業ルーム」(春日町2-22、高萩市民センター3階)は平日9時〜17時利用可、月額10,000円でインターネット環境・備品を含みます。

創業時の目線:月額1万円の起業ルームは、法人登記の要否を含めて水戸市のシェアオフィス(月3万円台〜)より初期費用を抑えられます。まずは商工会で創業スクールの受講から始め、証明取得と並行して物件・資金計画を詰める順番が効率的です。

7. 開業手続きの窓口(保健所・許認可・税務)

  • 飲食店営業許可など:高萩市は保健所設置市ではないため、茨城県日立保健所 衛生課(日立市助川町2-6-15)が窓口です。管轄区域は日立市・高萩市・北茨城市の3市。代表電話0294-22-4188、衛生課0294-22-4190。
  • 法人市民税:法人税割8.4%。均等割は資本金等1,000万円以下・市内従業者50人以下の最小区分で年50,000円
  • 事業所税:高萩市の市税案内には事業所税が列挙されていませんが、課税団体該当性を市が直接明記した一次資料は確認できていません。該当の有無は市税務課へご確認ください。

8. 高萩市で創業するときのチャンスとリスク

チャンス

  1. 日立市との双方向通勤(高萩→日立3,259人・日立→高萩2,038人、令和2年)― 一方的な人口流出ではなく、人材が行き来する産業関係にあり、双方向の通勤客を狙える立地に商機があります。
  2. 27事業所が業種分散する工業団地(医薬品・臨床検査薬・建材・鍛造・精密金型・食品・電子部品等)― 特定企業・特定業種への依存度が低く、BtoBサービスの営業先を複数業種に分散できます。
  3. 花貫渓谷紅葉期の集中集客(10〜12月で193,400人、令和6年)― 期間限定型のビジネス設計次第で、短期間に高い集客を取り込めます。

リスク

  1. 人口は令和2年比9.6%減と、県北の中でも減少幅が大きく、高齢化率は39.7%(令和7年10月1日推計)に達しています。
  2. 観光が10〜12月に極端に集中しており、通年営業を前提にした花貫渓谷周辺の店舗は閑散期の稼働率が課題になります。
  3. 中心市街地の空き店舗率・通行量、市独自補助金の詳細要件など未取得の情報が多く、申請・出店の判断は必ず市窓口での確認を前提にする必要があります。

創業予定であれば、まず特定創業支援等事業の証明取得を起点に、日立市との人の往来、工業団地の業種分散、紅葉期の繁閑差という高萩市固有の3条件を踏まえて事業計画を組み立てることが、無理のない判断につながります。

データ出典

免責:補助金・融資・税制・施設利用条件は年度ごとに変更される場合があります。申請、契約、着工、開業の前に、必ず高萩市、高萩市商工会、茨城県日立保健所など各窓口で最新情報をご確認ください。本記事の数値は2026年8月8日時点で確認できた公表資料に基づいています。

ABOUT ME
佐藤
佐藤
税理士・公認会計士
東京都立大学(旧・首都大学東京)を卒業後、KPMGあずさ監査法人に入所。銀行・証券会社をはじめとする日系金融機関を中心に、監査業務に従事してまいりました。その後、茨城県つくば市にて税理士事務所を開設し、現在に至ります。
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