SECTION 02
2. 人口データで読む小美玉市
減っている市場だという事実と、市内に雇用があるという強みを、同時に見ます。
2-1. 人口規模と推移
令和7年国勢調査の速報値で、小美玉市の人口は46,754人(県内22位)。令和2年から2,116人(−4.3%)の減少で、茨城県全体の減少率(−2.6%)よりも大きく落ち込んでいます。世帯数は19,371世帯、1世帯当たり2.41人です。
人口動態の内訳では、令和6年の出生数241人・死亡数681人で、自然増減は−440人。転入・転出数(社会増減)は市の公式統計で月次の合計増減のみが公開されており、内訳は今回確認できませんでした(未取得)。
創業時の目線
4.3%という減少率は、県平均より大きいという事実から目をそらさずに計画する必要があります。人口そのものを客層のベースにする業態は、現状維持ではなく「今後も緩やかに縮む前提」で採算ラインを引くべきです。
2-2. 年齢構成 ― 誰が住んでいる街か
10.3%年少人口(0〜14歳)
57.3%生産年齢人口(15〜64歳)
32.4%老年人口(65歳以上)
令和7年10月1日時点の推計で、年少人口(0〜14歳)10.3%、生産年齢人口(15〜64歳)57.3%、老年人口(65歳以上)32.4%(合計100.0%)。高齢化率32.4%は、同じ県央地域の水戸市(27.9%)より4.5ポイント高く、農村部を多く抱える市の姿がそのまま数字に出ています。
創業時の目線
高齢者向けサービス(訪問系・介護・生活支援)の需要が着実にある一方、生産年齢人口も57.3%を確保しており、働く世代がいなくなったわけではありません。空港・工業団地・農業といった地元雇用の受け皿があることが、この年齢構成を支えていると考えられます。
2-3. 世帯構成 ― 単価と客層を決める要素
1世帯当たり人員は2.41人。単身・二人世帯への分解が県内最速で進んでいる水戸市(2.10人)と比べると、小美玉市はファミリー世帯・複数世代同居の比率が相対的に高い可能性があります。
創業時の目線
水戸市のような「個食・単身向け」一辺倒の設計よりも、ファミリー向けの容量・単価設計や、複数世代が一緒に使えるサービス(子育て支援、家族向け飲食など)のほうが小美玉市の世帯構成には合いやすいと考えられます。
2-4. 昼間人口と商圏 ― 「住んでいる人」だけが客ではない
47,969人昼間人口(令和2年)
48,870人夜間人口(令和2年)
98.2昼夜間人口比率
令和2年国勢調査では、小美玉市の昼間人口は47,969人、夜間人口は48,870人で、昼夜間人口比率は98.2。昼間人口が夜間人口をわずかに下回るだけで、ほぼ均衡した数値です。
創業時の目線
住民の大半が市外へ通勤・通学で流出しきってしまう自治体も少なくない中で、昼夜間人口比率98.2は「市内に働く場所がある」ことの表れです。工業団地・空港・農業が地元雇用を支えており、平日昼間の需要が周辺のベッドタウンほど痩せていない可能性があります。
2-5. 外国人・学生など特徴的な層
外国人住民数・国籍別内訳は、市公式ページ・県の統計資料のいずれからも今回確認できませんでした(未取得)。一次資料が非公開である可能性が高く、この点は正直にお伝えします。
一方で、小美玉市には住民以外に毎日大量の人が出入りする、他の市町村にはない構造があります。市内に立地する茨城空港(百里飛行場)の令和7年度旅客数は834,265人(過去最多を更新)。人口4万6千人台の市に、年間83万人超の”通過人口”が加わっている計算です。詳しくは次章「エリア別の特徴」で扱います。
SECTION 03
3. エリア別の特徴
― どこで開業するかで別のビジネスになる
2町1村が合併してできた市。どの地区で開くかで、客層も業態も変わります。
2006年3月27日、東茨城郡小川町・美野里町、新治郡玉里村の2町1村が合併し、小美玉市が誕生しました。市名は3町村の頭文字(小・美・玉)から取られています。合併前は小川町・美野里町が「県央地域」、玉里村が「県南地域」に区分されていましたが、合併後は全域が県央地域に統一され、自動車のナンバープレートも「水戸ナンバー」でそろっています。
01
小川地区(旧小川町)
市役所本庁舎が置かれる、行政の中心地。
市役所本庁舎が置かれる行政の中心地です。
02
美野里地区(旧美野里町)
商工会本所と「美野里地区企業連絡会」26社が集まる産業の中心。
小美玉市商工会の本所(部室1111-3)が立地し、市の産業行政の中心的なエリアです。市の企業ガイドブックに掲載される「美野里地区企業連絡会」26社の集積地でもあります。
03
玉里地区(旧玉里村)
霞ヶ浦に面し、「玉里工業団地連絡協議会」14社が立地。
霞ヶ浦に面し、かつては県南地域に区分されていた経緯を持つエリアです。「玉里工業団地連絡協議会」14社が立地しています。
04
与沢・百里エリア(茨城空港周辺)
令和7年度の旅客834,265人は過去最多。ただし多くは「通過客」。
茨城空港(百里飛行場)が立地します。防衛省航空自衛隊百里基地との軍民共用空港で、2010年3月11日に開港しました。
令和7年度の旅客数は834,265人(国内751,738人/国際82,527人)で過去最多を更新。推移を見ると、令和元年度776,002人→令和5年度748,396人→令和6年度776,063人→令和7年度834,265人と、コロナ禍からの回復に加えて増便・新規就航が押し上げています。就航路線は国内線が札幌・神戸・福岡・長崎・鹿児島・那覇・宮古、国際線が台北・上海・西安・ソウル(仁川)・清州です。
空港に隣接して「空のえき そ・ら・ら」(山野1628-44)があります。直売所・物産館(取扱商品400点以上)・乳製品加工施設(ヨーグルト工場)・ビュッフェレストランを備えた市直営の農産物直売・体験施設で、駐車場は約150台です。開業年・年間来場者数は今回確認できませんでした(未取得)。
空港が運ぶ人(令和7年度)
834,265人
茨城空港 年間旅客数(国内751,738人/国際82,527人)
市に住んでいる人(令和7年)
46,754人
小美玉市の人口(国勢調査 速報値)
創業時の目線
空港利用者83万人超は魅力的な数字ですが、そのまま「小美玉市内で消費される83万人分の需要」ではありません。多くは札幌・福岡・台北といった目的地への通過客で、市内に長く滞在するとは限りません。駐車場・送迎・レンタカー・空港土産・機内食関連の食品加工など「空港利用者を明確に狙う業態」と、住民を相手にする「地域密着型の業態」は、需要の性質も店の作り方も別設計で考える必要があります。「空港がある=どんな商売でも成り立つ」わけではない、という前提で計画してください。
SECTION 04
4. 産業構造
― この街のお金はどこから来るのか
第1次産業10.85%、第2次産業29.80%。県央地域では異質な産業構成です。
4-1. 産業別の就業者構成
令和2年国勢調査ベース
令和2年国勢調査ベースで、第1次産業10.85%、第2次産業29.80%、第3次産業59.35%(合計100.00%)。
第1次産業就業者10.85%は、県内でも高い部類に入ります。参考までに、農業産出額が全国トップクラスとされる鉾田市は29.99%、坂東市は10.57%です。小美玉市はこの2市ほど突出してはいませんが、後述する生乳生産・畜産を中心に、県央地域の中では農業への依存度が明確に高い自治体だといえます。
創業時の目線
第2次産業29.80%も無視できない水準です。茨城空港テクノパークをはじめとする工業団地の存在が、第3次産業に偏りがちな県央地域の中で異質な産業構成を作っています。ものづくり関連のBtoBビジネスを考えるなら、選択肢になり得ます。
4-2. 事業所数と従業者数
小美玉市単体の事業所数・従業者数について、今回の調査では信頼できる一次資料を確認できませんでした(未取得)。市の統計ページにも同項目の掲載はありません。
4-3. 商業(卸売・小売)の市場規模
年間商品販売額は1,162億円(令和2年)です。県内主要市町村との比較は以下の通りです。
※ 棒の長さは水戸市(1兆5,687億円)を100%とした実数比です。
小美玉市の年間商品販売額は、県西の常総市とほぼ同額です。水戸市(1兆5,687億円)の約13分の1、隣接する石岡市(1,569億円)よりも小さい規模で、大規模な商業集積を前提にした出店計画には向きません。
創業時の目線
小美玉市は「大きな商圏を持つ街」ではありません。広域集客型の大型店で勝負するより、住民・農業関係者・空港利用者という限られたセグメントに絞った業態設計のほうが現実的です。
4-4. 製造業・農業など地域の基幹産業
2,598億円製造品出荷額等(令和5年)
51.7ha茨城空港テクノパーク総面積
26ha分譲中の残区画
製造品出荷額等は2,598億円(令和5年)です。主な進出企業(本社は市外)として、食品加工のカゴメ株式会社・一番食品株式会社(本社:福岡県飯塚市)、乳製品の株式会社明治、ゴムの横浜ゴム株式会社が茨城工場を構えています。いずれも小美玉市に本社があるわけではなく、あくまで工場立地です。
工業団地は茨城空港テクノパーク(小美玉市下吉影、総面積51.7ha)。分譲中の区画が26ha残っており、想定分譲価格は11,900〜13,200円/㎡です。成田運輸・クドウ・フレックス・みなと運送・シンテックなどが立地しています。
農業では、小美玉市は茨城県内で生乳生産量1位とされています(市公式移住ポータル「おみたまくらし」の記載)。全国順位・具体的な生産量(トン数)、農業産出額(億円)は、今回一次資料で確認できませんでした(未取得)。市はこの生乳を生かして「ヨーグルトのまち」を掲げ、市の第三セクター株式会社小美玉ふるさと食品公社(山野1628-42)が「おみたまヨーグルト」などの乳製品を製造しています。
創業時の目線
生乳生産量県内1位という看板は強力ですが、具体的な生産量や農業産出額が公開資料で確認できない以上、それを前提にした事業計画(地域ブランド認証や補助金要件など)は個別に市農政課へ確認する必要があります。「ヨーグルトのまち」という打ち出し自体は、食品加工・観光・ふるさと納税と組み合わせた商品開発の切り口として活用できます。
SECTION 05
5. 小美玉市を代表する企業
― 取引先候補として
市内本社は8社。取引規模で見れば「市外本社の工場」も候補に入ります。
小美玉市の企業ガイドブックに掲載されている、市内に本社(本店)を置く企業です。
運送業
有限会社浅美運輸
小美玉市西郷地1684-1
食品製造業
イトウ製菓株式会社
小美玉市西郷地1667
乳製品製造業(市第三セクター)
株式会社小美玉ふるさと食品公社
小美玉市山野1628-42
花き卸売業
北関東花き株式会社
小美玉市部室1201
ゴルフ場運営
株式会社太平洋クラブ
小美玉市三箇952
養鶏・鶏卵販売業
たまご&ファーマーズ株式会社
小美玉市小岩戸字西峰1971-1
警備業
中央警備保障株式会社
小美玉市江戸576-3
運送・倉庫業
美野里運送倉庫株式会社
小美玉市堅倉1698-12
注意
以下は本社が市外にある「進出企業」で、市内には工場・事業所のみを構えています。カゴメ株式会社(本社:東京都)茨城工場、株式会社明治(本社:東京都)茨城工場、横浜ゴム株式会社(本社:東京都)茨城工場、一番食品株式会社(本社:福岡県飯塚市)関東美野里工場。取引先候補にはなりますが、「小美玉市の企業」として紹介するのは正確ではありません。
創業時の目線
市内本社の企業は運送・食品・農畜産関連が中心で、上場企業や大企業本社はありません。BtoBの営業対象としては、市内本社8社よりも、市外本社の進出企業(工場単位での取引)のほうが取引規模は大きい可能性があります。
SECTION 06
6. 創業支援制度とお金の話
市独自の創業補助金はありません。起点は特定創業支援等事業の証明です。
6-1. 特定創業支援等事業 ― まず最初に取るべき証明
小美玉市は産業競争力強化法に基づく創業支援等事業計画の認定を、2023年8月31日に受けています。
| 項目 |
内容 |
| ワンストップ相談窓口 |
小美玉市役所 商工観光課 |
| 特定創業支援事業の実施機関 |
小美玉市商工会 |
| 支援内容 |
経営指導員によるビジネスプラン作成支援、専門家による営業戦略・販路開拓・資金計画のコンサルティング、経営・財務・人材育成・販路開拓の4分野セミナー |
| 優遇措置 |
会社設立時の登録免許税0.7%→0.35%への軽減/無担保・第三者保証人不要の創業関連保証/日本政策金融公庫 新規開業支援資金の利率引き下げ/小規模事業者持続化補助金(創業型)の対象資格 |
窓口:産業経済部 商工観光課 商工企業誘致係 0299-48-1111(内線1160〜1162)/〒319-0192 小美玉市堅倉835
創業時の目線
特定創業支援等事業の証明を取得すれば、登録免許税が半減し、無担保・無保証人の保証枠も使えます。まず商工観光課か商工会に相談して証明取得の手続きに乗ることが、小美玉市でも最初にやるべきことです。
6-2. 小美玉市独自の補助金
今回の調査で、小美玉市独自の「創業補助金」に相当する制度は確認できませんでした。複数の補助金検索サイトで小美玉市の助成金一覧を確認しましたが、創業・起業に特化した市単独の補助金は掲載されていません。
近い制度としては、市民雇用奨励金(新規雇用者1人につき年額10万円、1事業者あたり上限1,000万円、最長3年度)があります。ただし、これは「産業活動の活性化及び雇用機会の創出に関する条例」に基づく雇用創出策であり、創業そのものを支援する補助金ではない点に注意してください。
| 制度名 |
内容 |
令和8年度の状況 |
| 小美玉市わくわく茨城移住支援金 |
2人以上世帯100万円(18歳未満1人につき+100万円)/単身世帯60万円。東京23区在勤・在住者等が対象 |
実施中。予算に限りがあるため要事前相談 |
| 小美玉市若年世帯等住宅取得助成金 |
県外転入40万円/県内転入・市内転居各10万円、18歳以下の子1人につき+5万円 等 |
令和8年4月23日〜令和9年1月29日 受付中 |
創業時の目線
「起業」はわくわく茨城移住支援金の対象要件の一つ(茨城県の起業支援事業の認定を受けていること)に含まれるにすぎず、単独の創業助成金ではありません。市外から移住して創業する場合は移住支援金と特定創業支援等事業の証明を組み合わせる形になりますが、創業単独で使える市の補助金がない点は、複数の補助金メニューを持つ水戸市などと比べて支援環境が薄いと言わざるを得ません。
6-3. 融資
小美玉市独自の融資あっせん制度について、限度額・金利・保証料補助・利子補給の詳細は市公式サイト上で確認できませんでした(未取得)。確認できたのは、商工観光課が窓口となる「経営安定関連保証(セーフティネット保証)制度」の案内のみです。
| 制度 |
限度額 |
条件 |
| 茨城県 創業支援融資 |
3,500万円 |
年1.5〜1.8%/保証料は県の補助制度あり/設備10年・運転7年以内 |
| 小美玉市 独自の融資あっせん制度 |
未取得 |
商工観光課・商工会に直接要確認 |
創業時の目線
市独自の制度設計が公開情報だけでは分からない自治体は珍しくありません。小美玉市で創業融資を検討する場合、まずは商工観光課(0299-48-1111)か小美玉市商工会(0299-48-0244)に直接問い合わせ、市独自の制度の有無を確認することをおすすめします。公開情報を前提にする限り、県の創業支援融資や日本政策金融公庫が現実的な軸になります。
6-4. 相談窓口・コワーキング
| 窓口 |
所在地 |
連絡先 |
| 小美玉市商工会(本所) |
〒319-0132 小美玉市部室1111-3 |
0299-48-0244 |
| 小美玉市役所 商工観光課 |
〒319-0192 小美玉市堅倉835 |
0299-48-1111(内線1160〜1162) |
| 経営相談窓口(市と茨城県よろず支援拠点の共同実施) |
商工観光課経由・事前予約制 |
0299-48-1111(相談無料) |
コワーキングスペース・インキュベーション施設について、市内に立地する該当施設は今回確認できませんでした(未取得)。
創業時の目線
コワーキングスペースが見当たらないことは、そのまま「作業場所を自分で確保する前提で計画する必要がある」ことを意味します。空港近くの「そ・ら・ら」や、隣接する水戸市・石岡市・つくば市などのシェアオフィスとの併用も選択肢になります。
SECTION 07
7. 開業手続きの窓口
保健所は茨城県中央保健所(水戸)。法人税割は8.4%です。
- 飲食店営業許可等:小美玉市は茨城県中央保健所(水戸保健所)の管轄です。厚生労働省の公式資料でも「中央保健所:笠間市・小美玉市・東茨城郡茨城町・大洗町・城里町」の管轄が明記されています。
- 所在地:〒310-0852 茨城県水戸市笠原町993-2
- 電話:029-241-0100
- 法人市民税:法人税割8.4%(平成31年10月1日以後開始事業年度)。均等割は資本金1,000万円以下・従業者50人以下の区分で年50,000円です。
8.4%は水戸市・取手市・筑西市・大洗町・笠間市・守谷市・石岡市・龍ケ崎市・常総市・つくばみらい市・那珂市・坂東市・結城市・下妻市など、県内の多くの自治体が採用している税率(制限税率)です。一方、牛久市・神栖市・鹿嶋市・阿見町・常陸太田市・鉾田市は標準税率の6.0%を採用しており、法人税割だけを見れば、これらの自治体のほうが法人の税負担は軽くなります。
事業所税:事業所税は人口30万人以上の指定都市等が課税団体となる制度で、小美玉市(人口約4.7万人)は課税団体に該当しません。市の税金ページ一覧にも事業所税の記載はありませんでした。
創業時の目線
均等割5万円は資本金1,000万円以下・従業者50人以下という小規模法人の最も基本的な区分で、多くの創業法人がここに当てはまります。法人税割8.4%は水戸市など県内の主要都市と同水準で、小美玉市だから税負担が特に軽い・重いということはありません。