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【水戸市】創業・起業のための地域データガイド|人口・産業・支援制度でわかるビジネス環境

佐藤

茨城県の県庁所在地であり、県内屈指の商業集積を持つ水戸市。

一方で、2025年の国勢調査ではついにつくば市に人口県内1位の座を明け渡し、中心市街地の空洞化という課題も抱えています。

「水戸で開業する」という選択は、実際のところどういう選択なのか。人口・産業・企業・支援制度のデータから、創業予定者の視点で整理しました。

この記事でわかること

  • 水戸市の人口規模・年齢構成と、そこから読み取れる客層
  • 昼間人口と商圏人口から見た「実際に相手にできる市場の大きさ」
  • 産業構造と、卸売・小売の市場規模(金額ベース)
  • 水戸市に本社を置く主要企業=取引先候補
  • 創業時に使える補助金・融資・相談窓口の具体的な金額と窓口

1. 水戸市の基本プロフィール

項目データ基準時点
人口265,773人(県内2位)令和7年国勢調査 速報値
世帯数126,498世帯同上
人口増減(令和2年比)−4,912人(−1.8%)同上
1世帯当たり人員2.10人(県内最少同上
面積217.32km²令和8年1月1日
人口密度1,219.6人/km²令和8年4月1日
高齢化率(65歳以上)27.9%令和7年10月1日推計
昼夜間人口比率109.2令和2年国勢調査
商圏人口約82万人水戸市企業誘致資料
1人当たり市町村民所得3,908千円令和5年度

2. 人口データで読む水戸市

2-1. 人口規模と推移

令和7年国勢調査の速報値で、水戸市の人口は265,773人。令和2年から4,912人(−1.8%)の減少です。同じ調査でつくば市が268,991人(+11.3%)となり、水戸市は県内1位から2位になりました。

ただし、減少率−1.8%という数字は茨城県全体(−2.6%)よりも緩やかで、県北の日立市(−9.0%)や県西の桜川市(−10.0%)と比べれば、水戸市の人口はかなり底堅いといえます。

内訳を見ると、令和6年の自然増減は−1,805人(出生1,643人・死亡3,482人)、社会増減は−1,331人。減少の主因は自然減であり、転出超過はそれに次ぐ規模です。

創業時の目線:人口は減っているものの、県内で26万人規模を維持する自治体は水戸市とつくば市だけです。「顧客の絶対数」を確保したい業種にとって、県内で最も無難な選択肢のひとつであることは変わりません。

2-2. 年齢構成 ― 誰が住んでいる街か

令和7年10月1日時点の推計では、年少人口(0〜14歳)11.8%、生産年齢人口(15〜64歳)60.2%、老年人口(65歳以上)27.9%(年齢不詳を除いた割合)。令和2年国勢調査時点(12.8%/60.2%/27.0%)と比べると、子どもが減って高齢者が増える構図が続いています。

高齢化率27.9%は、県全体の水準と比べればやや低めで、生産年齢人口の比率が60%を超えている点が特徴です。県庁・市役所・金融機関の本支店・病院が集まり、働き盛り世代が仕事のために住み続ける都市構造がそのまま数字に出ています。

創業時の目線:高齢者向けサービス(介護・訪問系・終活関連)の需要が着実に伸びる一方、平日昼間に動く現役世代の需要も残っている、二層構造の市場です。どちらを取るかで立地の選び方が変わります。

2-3. 世帯構成 ― 単価と客層を決める要素

1世帯当たり人員2.10人は茨城県内で最も少ない数字です(県平均2.29人)。世帯数は増加している一方で人口が減っている、つまり単身世帯・二人世帯への分解が県内で最も進んでいる自治体ということになります。

創業時の目線:ファミリー向けの大容量・大人数前提の商品設計は、水戸市では県内他市より刺さりにくい可能性があります。単身・共働き・シニア夫婦を想定した少量・個食・時短の設計のほうが市場に合います。飲食・小売・住宅関連はここを外すと痛い。

2-4. 昼間人口と商圏 ― 「住んでいる人」だけが客ではない

令和2年国勢調査では、水戸市の昼間人口は295,673人、夜間人口270,685人で、昼夜間人口比率は109.2。つまり日中は約2.5万人が市外から流入しています。

さらに水戸市自身が企業誘致資料で示す商圏人口は約82万人。ひたちなか市、那珂市、笠間市、茨城町、大洗町、東海村などからの買い回り需要を含んだ数字です。

創業時の目線:水戸市の市場規模を「26万人」で見積もると過小評価になります。特に平日ランチ、専門サービス(士業・医療・修理)、高単価の買い回り品は、市外からの流入客を前提に設計できます。逆に日用品・食品など最寄り品は、居住人口ベースで冷静に見積もるべきです。

2-5. 外国人・学生など特徴的な層

  • 外国人住民:4,772人(2025年6月末)。総人口比で約1.8%。国籍別では中国775人、韓国718人、フィリピン501人、ベトナム550人、ネパール484人、インドネシア325人と分散しており、特定の国籍に偏っていません。
  • 学生:茨城大学(水戸キャンパスに人文社会科学部・教育学部・理学部)は全キャンパス合計で8,035人、常磐大学・常磐短期大学グループが3,075人。加えて県立高校が集中しています。

創業時の目線:外国人比率1.8%は「エスニック専門業態が単独で成立する水準」とは言い切れませんが、国籍が分散しているぶん、多国籍対応の食材店やビザ・生活支援サービスには一定の余地があります。学生層は水戸駅北口〜大工町、赤塚駅周辺に集中しており、低単価・高回転の業態はこのエリアと相性が良いです。


3. エリア別の特徴 ― どこで開業するかで別のビジネスになる

水戸市はコンパクトな市域に見えて、エリアごとに客層がはっきり分かれます。

① 水戸駅周辺(南町・泉町・大工町)
県内最大のオフィス街兼商業地。常陽銀行本店(南町2-5-5)、水戸京成百貨店(泉町1-6-1)、駅ビル「エクセル」「エクセルみなみ」が集積します。ビジネス需要と繁華街需要が重なるエリアで、平日夜と休日で客層が入れ替わるのが特徴。ただし後述の通り中心市街地の通行量は往時から大きく落ちています。

② 赤塚駅周辺
市西部の生活拠点。市の複合施設「ミオス」(みと創業支援センターが入居)、フレスポ赤塚、ホームセンター山新赤塚店などが立地し、水戸市の都市再生整備計画の対象地区でもあります。住宅地に近く、日常利用型の業態向き。

③ 内原エリア
イオンモール水戸内原(内原2-1/2005年11月開業・2012年12月増床/店舗面積約78,000㎡/駐車場約4,100台=イオンモール公式サイト記載)を核とした広域集客型のエリア。車での来店が前提で、市外からの流入も大きい。ここは「モールの中か外か」で条件がまったく変わります。

④ 笠原・県庁エリア
茨城県庁と水戸市保健所(笠原町993-13)、茨城新聞社などが立地する行政集積エリア。平日昼間の需要が安定しており、士業・BtoBサービスの拠点として合理的です。

⑤ 千波・郊外の幹線沿い
ケーズホールディングス本社(城南)、山新本社(千波町2292)、暁飯島工業本社(千波町2770-5)など、地元有力企業の拠点が国道沿いに点在します。ロードサイド型の業態が中心。


4. 産業構造 ― この街のお金はどこから来るのか

4-1. 産業別の就業者構成

令和2年国勢調査ベースで、第1次産業2.33%、第2次産業18.65%、第3次産業79.01%。工業都市である日立市やひたちなか市とは対照的な、典型的な third-industry 型の県都です。

4-2. 事業所数と従業者数

令和3年経済センサス‐活動調査で、市内の事業所数は12,442事業所、従業者数144,093人。産業別では以下が上位です。

産業事業所数従業者数
卸売業・小売業2,71725,745人
医療・福祉1,11323,666人
サービス業(他に分類されないもの)1,11620,926人
宿泊業・飲食サービス業1,38011,457人
建設業1,17710,364人
生活関連サービス業・娯楽業1,1516,890人

※卸売業・小売業は茨城県の産業別集計報告書の確定値。なお水戸市の総合計画資料には「13,824事業所・144,527人(令和3年度)」という異なる集計値も掲載されており、参照する資料によって事業所数の見え方が変わります。

創業時の目線:事業所数が最も多いのは卸売・小売ですが、1事業所あたりの従業者数が最も多いのは医療・福祉(約21人)です。BtoBで営業先を探すなら、数を狙うなら小売、単価を狙うなら医療・福祉と建設業という構図になります。

4-3. 商業(卸売・小売)の市場規模

令和3年経済センサス‐活動調査(販売額は令和2年の年計)による水戸市の商業データです。

区分事業所数従業者数年間商品販売額県内シェア
卸売業8128,743人約1兆1,897億円33.1%
小売業1,90517,002人約3,790億円13.1%
合計2,71725,745人約1兆5,687億円

注目すべきは卸売業の県内シェア33.1%。水戸市は「小売の街」である以上に「県全体に商品を配る卸の街」です。県内向けに物を売る事業を考えているなら、水戸に営業拠点を置く合理性は高いといえます。

4-4. 製造業・その他

製造品出荷額等は1,703億円(令和5年・経済構造実態調査)。県内の工業都市と比べれば小規模で、水戸市の経済は製造業に依存していません。市町村内総生産は1兆3,827億円(令和4年度)、市町村民所得は1兆481億円、1人当たり3,908千円(令和5年度)です。

4-5. 押さえておくべきリスク ― 中心市街地の状況

第2期水戸市中心市街地活性化基本計画によると、

  • 空き店舗率:17.0%(2021年度/ピークの2016年度は23.3%)
  • 歩行者通行量:約89,489人(令和4年度・日曜+月曜合計/ピークの昭和54年度は約297,468人)
  • 商業店舗数:約480店舗(2016年/1988年は約940店舗)
  • 中心市街地の居住人口:約7,000人(2021年10月)

空き店舗率は改善傾向にあるものの、通行量はピーク時の3分の1以下です。「水戸駅前だから人が歩いている」という前提で計画を立てるのは危険で、実際の通行量調査の数字で検証すべきエリアです。


5. 水戸市を代表する企業 ― 取引先候補として

水戸市に本社(本店)を置く主要企業です。支店・店舗のみの企業は除いています。

企業名業種規模
株式会社常陽銀行地方銀行従業員3,112名/預金量10兆4,059億円(2025年9月末/本店:南町2-5-5)
株式会社ケーズホールディングス家電量販東証プライム(8282)/売上7,597億円・556店舗(2026年3月期)
株式会社山新ホームセンター売上565億円・従業員2,064名(2026年2月期/千波町2292)
株式会社水戸京成百貨店百貨店売上213億円・従業員379名(2026年2月期/泉町1-6-1)
茨城交通株式会社バス・運輸従業員1,130名(袴塚3-5-36)
株式会社茨城新聞社新聞・メディア売上32億1,000万円・従業員212名(笠原町978-25)
香陵住販株式会社不動産東証スタンダード(3495)/従業員232名(南町2-4-33)
暁飯島工業株式会社管工事・設備東証スタンダード(1997)/従業員166名(千波町2770-5)
ホリイフードサービス株式会社外食東証スタンダード(3077)/140店舗超
明利酒類株式会社酒類製造前身の加藤酒造は安政年間創業

注意:めぶきフィナンシャルグループ(東証プライム7167)は2022年1月に本店登記を東京都中央区へ移しています。水戸市に本社があるのは傘下の常陽銀行です。またカスミ(つくば市)、関彰商事(筑西市・つくば市)は水戸市本社ではありません。

創業時の目線:上場企業本社が4社あり、地銀本店・地元紙・地元バス会社が揃っている点は、県内他市にはない水戸市の強みです。BtoBの創業なら、この10社とその取引先ネットワークが最初の営業リストになります。


6. 創業支援制度とお金の話

6-1. 特定創業支援等事業 ― まず最初に取るべき証明

水戸市は産業競争力強化法に基づく創業支援等事業計画の認定を受けており(平成26年6月認定)、指定の講座・相談を受けて証明を取得すると、以下の優遇が受けられます。

優遇内容具体的な効果
登録免許税の軽減税率0.7%→0.35%(株式会社15万円→7.5万円、合同会社6万円→3万円)
創業関連保証の特例無担保・第三者保証人不要の保証を、通常の「事業開始2か月前」ではなく6か月前から利用可
日本政策金融公庫新規開業資金等の貸付利率引き下げ
小規模事業者持続化補助金創業枠の要件を満たせば補助上限200万円・補助率2/3
水戸市創業期支援補助金申請の前提条件となる

主な実施機関:みと創業支援塾/伴走型創業スクール(一財)水戸市商業・駐車場公社 029-257-6656、起業・スタートアップセミナー(水戸商工会議所 029-224-3315)、茨城県信用保証協会、水戸信用金庫「夢ぷらざ」、日本政策金融公庫水戸支店、常陽銀行ビジネスプランコンテスト。

窓口:水戸市商工課 企業誘致・創業支援室(市役所5階)029-232-9185

6-2. 水戸市独自の補助金

制度名上限額補助率令和8年度の状況
水戸市創業期支援補助金1回目10万円/2回目5万円/3回目2.5万円(創業後5年未満に計3回)1/2令和8年度分は準備中(2026年7月時点で未受付)
まちなか店舗等開設促進補助金100㎡未満:100万円または50万円/100〜300㎡未満:200万円または100万円/300〜500㎡未満:300万円または150万円1/2以内随時受付中(事前相談が必要)
創業支援利子補給制度融資利率の1%分を融資実行日から3年間実施中(毎年申請が必要)
中小企業振興支援補助金20〜100万円令和8年度は予算到達により受付終了

「まちなか店舗等開設促進補助金」は中心市街地・下市地区で3か月以上未使用の物件を賃借して開業する場合が対象で、週5日以上・1日6時間以上の営業などの要件があります。午前9時〜午後3時の間で週の半数以上営業すれば上位の金額が適用される設計になっており、日中営業の業態が有利です。

6-3. 融資

制度限度額条件
茨城県 創業支援融資3,500万円年1.5〜1.8%/保証料年0.9%(経営者保証不要の場合1.1%)→2027年3月31日まで0.3%引下げ、さらに引下げ後の5割(上限0.3%)を県が補助/設備10年・運転7年以内
水戸市 自治金融1,000万円信用保証料を市が全額補助+利子1%分を3年補助/7年以内
水戸市 振興資金2,000万円同上
日本政策金融公庫(水戸支店)商品による南町3-3-55 常陽海上ビル/029-221-7137

※水戸市の自治金融・振興資金は「原則として同一事業を3か月以上継続」が要件で、開業前の資金には使えません。開業前は県の創業支援融資または公庫、開業後は市の制度という使い分けになります。

6-4. 相談窓口・コワーキング

窓口所在地連絡先
みと創業支援センター赤塚1-1 ミオス1階029-353-7303(中小企業診断士の無料相談)
水戸商工会議所029-224-3315
茨城県よろず支援拠点桜川2-2-35 茨城県産業会館029-224-5339(無料・平日9〜17時)
茨城県信用保証協会水戸市内029-224-7865

コワーキング/シェアオフィス

  • M-WORK(南町1-2-32):法人登記可。起業家メンタリングやVC相談にも対応。1〜2階にカフェ併設。
  • オープンオフィス水戸(Regus)(泉町2-2-33 水戸泉町ビル7F):シェアオフィス月33,900円〜(12か月契約)、コワーキング会員10,900円〜。

※かつて南町にあった「コワーキングスペースWagtail」は2026年2月28日で閉館しています。古い記事を参考にしないよう注意してください。


7. 開業手続きの窓口

  • 飲食店営業許可・理美容所・旅館業など:水戸市は中核市のため、県ではなく水戸市保健所 保健衛生課 食品衛生係(笠原町993-13/029-243-7328)が窓口です。施設完成予定日の10日前までに申請。厚生労働省「食品衛生申請等システム」でのオンライン申請も可能です。
  • 法人市民税:法人税割8.4%(令和元年10月1日以後開始事業年度)。均等割は資本金1,000万円以下かつ市内従業者50人以下で年60,000円
  • 事業所税:事業所税は人口30万人以上の指定都市等が課税団体となる税で、水戸市(人口約26.6万人)は該当しないと考えられます。ただし念のため水戸市市民税課へご確認ください。

8. 水戸市で創業するときのチャンスとリスク

チャンス

  1. 商圏82万人・卸売県内シェア33.1% ― 県内向けビジネスの拠点として、水戸以上に合理的な場所は少ない
  2. 上場企業本社4社+地銀本店 ― BtoBの営業先が市内で完結する
  3. 単身・二人世帯比率が県内トップ(1世帯2.10人) ― 個食・時短・小容量の新しい業態が受け入れられやすい素地
  4. まちなか店舗等開設促進補助金が随時受付 ― 中心市街地なら最大300万円の改装補助を狙える

リスク

  1. 人口は減少局面(令和2年比−1.8%)で、自然減が主因のため反転しにくい
  2. 中心市街地の歩行者通行量はピーク時の3分の1以下。空き店舗率17.0%。「駅前=集客できる」は成立しない
  3. つくば市に人口県内1位を明け渡したとおり、県南の成長との対比で相対的地位は低下傾向
  4. 主要補助金の一部は年度当初に予算到達で終了(中小企業振興支援補助金は令和8年度受付終了済み)。年度初めに動くことが前提

創業予定であれば、まず特定創業支援等事業の証明取得(登録免許税半減+保証枠の前倒し+持続化補助金200万円枠)を最初のステップに置くのが、水戸市では最も費用対効果の高い動きです。

ABOUT ME
佐藤
佐藤
税理士・公認会計士
東京都立大学(旧・首都大学東京)を卒業後、KPMGあずさ監査法人に入所。銀行・証券会社をはじめとする日系金融機関を中心に、監査業務に従事してまいりました。その後、茨城県つくば市にて税理士事務所を開設し、現在に至ります。
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