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【坂東市】創業・起業のための地域データガイド|人口・産業・支援制度でわかるビジネス環境

佐藤

茨城県坂東市は、県内で唯一「鉄道が通っていない市」の一つでありながら、圏央道坂東ICを軸に工業団地の集積が進み、レタス・ねぎなど露地野菜の一大産地としても県内有数の農業産出額を誇る街です。人口減少は続いているものの、その減り方は県内でもかなり緩やかな部類に入ります。車社会・農業・工業団地という3つのキーワードから、創業予定者の視点でデータを整理しました。

この記事でわかること

  • 坂東市の人口規模・年齢構成と、人口減少率が県内で小さい理由
  • 「鉄道駅がない市」の交通事情と、車社会を前提にした商圏の考え方
  • 第1次産業比率が突出して高い産業構造と、農業関連ビジネスの余地
  • 圏央道坂東IC沿線の工業団地の集積状況と、企業立地優遇制度
  • 創業時に使える補助金・融資・相談窓口の具体的な金額と窓口

1. 坂東市の基本プロフィール

項目 データ 基準時点
人口 51,344人(県内19位) 令和7年国勢調査 速報値
世帯数 20,271世帯 同上
人口増減(令和2年比) −921人(−1.8%) 同上
1世帯当たり人員 2.53人 同上
面積 123.03km² 令和8年1月1日
人口密度 408.0人/km² 令和8年4月1日(常住人口50,194人ベース)
年齢構成 年少9.9%/生産年齢58.2%/老年32.0% 令和7年10月1日推計
昼夜間人口比率 93.3(昼間48,752人/夜間52,265人) 令和2年国勢調査
1人当たり市町村民所得 352.3万円 令和5年度

2. 人口データで読む坂東市

2-1. 人口規模と推移

令和7年国勢調査の速報値で、坂東市の人口は51,344人。令和2年から921人(−1.8%)の減少です。茨城県全体の減少率は−2.6%であり、坂東市の−1.8%という数字は、人口が増えた4市町を除けば県内でもっとも減少幅が小さい部類に入ります。

内訳を見ると、令和6年の自然増減は出生192人・死亡740人で自然減548人とかなり大きく、これだけを見れば人口減少がもっと進んでいてもおかしくありません。それでも全体の減少幅が小さいのは、社会増(転入超過)が自然減を一定程度相殺しているためです。実際、県が公表する令和6年12月単月の人口動態では、自然増減−39人に対して社会増減は+47人となっており、転入が転出を上回る月が発生していることが確認できます。年間を通じた社会増減の確定値までは公表データを確認できませんでしたが、圏央道沿線の工業団地への雇用流入や、東京圏からの移住支援策が下支えしている可能性があります。

創業時の目線:自然減が大きい街だからといって市場が縮んでいるとは限りません。工業団地の雇用に伴う転入世帯や、後述の移住支援金の対象者など、「新しく坂東市に来た人」向けの生活関連サービスには一定の需要が見込めます。

2-2. 年齢構成 ― 誰が住んでいる街か

令和7年10月1日時点の推計で、年少人口(0〜14歳)9.9%、生産年齢人口(15〜64歳)58.2%、老年人口(65歳以上)32.0%。高齢化率32.0%は県平均並みからやや高めの水準で、農業を基幹産業とする地方都市らしい年齢構成です。

創業時の目線:高齢化率32.0%は、訪問系サービス・買い物支援・在宅医療関連の需要が今後も伸びる水準です。一方で生産年齢人口が58.2%を占めており、工業団地・農業の担い手世代向けの需要も無視できません。

2-3. 世帯構成 ― 単価と客層を決める要素

1世帯当たり人員は2.53人で、単身・二人世帯化が進む水戸市(2.10人)などと比べると、ファミリー世帯・複数世代同居の比率が相対的に高いことがうかがえます。

創業時の目線:少量・個食型よりも、まとめ買い・世帯単位の消費を前提にした業態のほうが坂東市の世帯構成には合いやすいと考えられます。飲食・小売の商品設計はここを踏まえる価値があります。

2-4. 昼夜間人口と商圏 ― 「鉄道のない街」の通勤構造

令和2年国勢調査で、坂東市の昼間人口は48,752人、夜間人口は52,265人、昼夜間人口比率は93.3。夜間人口より昼間人口の方が少なく、市外へ通勤・通学に出る人が一定数いることを示しています。東京都心から40km圏に位置しながら、市内に鉄道駅がないため、この通勤流出は基本的に自動車によるものと考えられます。

創業時の目線:昼夜間人口比率が100を下回るからといって「日中人がいない」わけではありません。市内在住のまま自宅や工業団地・農地の近くで働く人も多く、駅前商圏という発想がそもそも成り立たない街です。立地選定は駅からの距離ではなく、幹線道路・工業団地・住宅地からの車のアクセスで考える必要があります。

2-5. 外国人住民 ― 農業・製造業を支える労働力

外国人住民数は1,749人(令和5年6月末現在)。国籍別ではブラジル373人、ベトナム368人、インドネシア206人、フィリピン154人、ミャンマー84人、中国57人と続きます。露地野菜の農業や工業団地の製造業の現場を、こうした外国人労働者が支えている構図がうかがえます。

創業時の目線:ブラジル・ベトナム・インドネシアなど特定国籍の比率が高いことから、食材店・生活支援サービス・多言語対応の業態には一定の潜在需要があります。農業法人・製造業の人材紹介や住居支援関連のビジネスも検討の余地があります。


3. エリア別の特徴 ― どこで開業するかで別のビジネスになる

坂東市は平成17年(2005年)3月22日、岩井市と猿島町の対等合併によって誕生しました。新市名は公募により選ばれています。

  • 岩井地区(旧岩井市):市役所や坂東市商工会など行政・商業機能が集積するほか、坂東インター工業団地・つくばハイテクパークいわいなど工業団地の多くがこのエリアに立地しています。
  • 猿島地区(旧猿島町):江戸末期から明治初期にかけての重要輸出品であった「さしま茶」の産地として知られ、現在も茶園・茶製造業がこの地域の特産となっています。

両地区の詳しい性格の違いを裏付ける一次資料までは確認できていませんが、「工業団地は旧岩井地区に集中」「さしま茶は猿島地区の特産」という事実の範囲では明確に言えます。

交通・車社会について:坂東市は県内で鉄道が通っていない市(もう1市は稲敷市)です。最寄り駅は東武野田線の愛宕駅、またはつくばエクスプレス・関東鉄道常総線の守谷駅で、いずれもバス乗り継ぎが前提になります。守谷駅からは「守谷駅直行坂東号」が運行しており、直行型で約45分、急行型で約55分です。自動車では圏央道坂東ICから市役所まで車で10分、常磐自動車道谷和原ICから約20分。関東鉄道の高速バス路線一覧にも坂東市発着の都心直行便は見当たらず、完全な車社会を前提にビジネスを設計する必要があります。

創業時の目線:「駅前物件を借りれば人が来る」という発想が通用しない街です。逆に言えば、駐車場の有無・幹線道路からの視認性・国道354号や坂東IC周辺のアクセスの良さが、立地選定の最重要ポイントになります。


4. 産業構造 ― この街のお金はどこから来るのか

4-1. 産業別の就業者構成

令和2年国勢調査ベースで、第1次産業10.57%、第2次産業37.94%、第3次産業51.49%。第1次産業比率10.57%は、水戸市(2.33%)やつくば市(2.53%)と比べて突出して高く、農業が坂東市経済の重要な柱であることを裏付けています。

4-2. 事業所数・従業者数

坂東市分の令和3年経済センサス‐活動調査に基づく事業所数・従業者数の一次集計は、本記事の調査時点では確認できませんでした(公表データなしとして扱います)。産業構造は次項以降の産業別就業者数・商業販売額・製造品出荷額・農業産出額から読み取ってください。

4-3. 商業(年間商品販売額)

令和2年(茨城県公式「市町村のデータ」記載値)の年間商品販売額は766億円です。県内主要市町との比較は以下の通りです。

市町村 年間商品販売額(令和2年)
水戸市 1兆5,687億円
つくば市 5,907億円
筑西市 1,876億円
常総市 1,162億円
龍ケ崎市 1,087億円
守谷市 1,028億円
笠間市 1,012億円
坂東市 766億円
那珂市 772億円
つくばみらい市 732億円
阿見町 571億円
大洗町 160億円

坂東市の766億円は那珂市(772億円)・つくばみらい市(732億円)とほぼ同水準で、県西地域の中規模都市としては標準的な商業規模といえます。

創業時の目線:商業の絶対規模は突出していない一方、後述の通り第1次・第2次産業の存在感が大きい街です。小売・飲食で勝負するより、農業・製造業を顧客とするBtoBや、直売・加工などの一次産業関連ビジネスの方が坂東市らしい戦い方になります。

4-4. 製造業・農業 ― 地域の基幹産業

製造業:製造品出荷額等は4,597億円(令和5年)。業種別の内訳は令和2年時点のデータになりますが、輸送用機械器具1,110.2億円、化学工業973.4億円、生産用機械器具146.0億円、電子部品・デバイス・電子回路86.0億円、プラスチック製品78.5億円、金属製品55.0億円と続きます(いずれも令和2年時点のため、令和5年の総額とは基準時点が異なる点にご留意ください)。

圏央道坂東IC(2017年2月26日、圏央道 境古河IC〜つくば中央IC間の全線開通と同時に開設)を軸に、4つの工業団地が集積しています。

工業団地 面積 分譲・進出状況
坂東インター工業団地 73.7ha 進出企業16社。令和4年4月に全区画完売
フロンティアパーク坂東 約71.9ha 分譲価格25,300〜31,100円/㎡。坂東ICから約4km、分譲区画がまだ残っている
つくばハイテクパークいわい 85.2ha 進出企業16社
沓掛工業団地 14.9ha 進出企業5社

坂東インター工業団地が完売済みである一方、フロンティアパーク坂東にはまだ分譲余地があり、圏央道沿線の物流適地を探す事業者にとっては実務的に検討価値のある情報です。

農業:農業産出額は238.4億円(令和5年、茨城県内5位)。内訳は耕種計138.5億円(うち野菜113.6億円、米18.8億円)、畜産計99.9億円(うち鶏73.3億円、豚20.8億円)です。作付面積ではレタス754ha、ねぎ491ha、はくさい197haと、首都圏向けの露地野菜産地としての規模が際立っています。

創業時の目線:第1次産業就業者比率10.57%・農業産出額県内5位という数字は、坂東市が「食」に関わる創業に強い土地であることを裏付けています。農産物直売、青果の加工・パッケージング、農業法人向けの資材・物流サービス、飲食店であれば地場野菜を使ったメニュー開発など、農業の川下・川上どちらの方向からも事業の余地があります。


5. 坂東市を代表する企業 ― 取引先候補として

坂東市に本店を置くことを登記情報等で確認できた企業は次の3社です。工業団地には他にも多数の企業が工場・事業所を構えていますが、本社所在地までは確認できなかったため、本記事では「進出企業」として区別し、掲載を見送りました。

企業名 本店所在地 業種・規模
キヤノンエコロジーインダストリー株式会社 坂東市馬立1234 キヤノン製品(複合機・プリンター・トナーカートリッジ)のリユース・リサイクル事業。従業員554人
日晃工業株式会社 坂東市沓掛1165-16 自動車用部品の製造業。従業員125人
野村産業株式会社 坂東市生子 さしま茶の生産・製造・販売(「のむらの茶園」運営)

坂東インター工業団地には角光化成、株式会社加藤製作所、株式会社エフピコ、大日精化工業など16社超が工場・事業所を構えていますが、これらは本社が坂東市外にある「進出企業」である可能性が高く、本記事では本店登記まで確認できたもののみを掲載しています。本店登記まで確認できたのは3社にとどまりました。

創業時の目線:BtoBで営業先を探す場合、本店企業だけでなく工業団地に立地する「進出企業」の坂東事業所・坂東工場も現実的な取引先候補です。本社所在地と実際の事業拠点は分けて考える必要があります。


6. 創業支援制度とお金の話

6-1. 特定創業支援等事業 ― まず最初に取るべき証明

坂東市は産業競争力強化法に基づく創業支援等事業計画の認定を受け、市・商工会・金融機関が連携して事業を実施しています。

優遇内容 具体的な効果
登録免許税の軽減 税率0.7%→0.35%(株式会社・合同会社設立時)
信用保証枠の拡大 通常枠とは別枠で1,000万円→1,500万円、事業開始6か月前から利用可

実施機関:坂東市商工観光課(総合相談窓口)、坂東市商工会(ワンストップ相談。経営戦略・財務戦略・人材育成・販路開拓を扱う4回以上の連続講座あり)、日本政策金融公庫、茨城県信用保証協会

窓口:坂東市商工観光課 0297-20-8666/坂東市商工会 0297-35-3317

6-2. 坂東市独自の補助金

制度名 上限額 補助率 令和8年度の状況
創業支援事業費補助金 10万円(対象経費20万円以上の場合は定額) 対象経費5万円以上20万円未満は1/2以内 令和8年4月1日〜令和9年3月31日の創業が対象。予算の範囲内での運用で、申込状況により年度途中終了の可能性あり。確定した募集開始・締切日は公式ページに明記がなく未確認のため、申請前に商工観光課への確認をおすすめします

対象は「坂東市認定特定創業支援等事業により支援を受けたことの証明書」の交付を受けた方で、市税等を滞納していないことも要件です。

6-3. 融資・制度融資

制度 限度額 条件
坂東市 振興金融 設備資金2,000万円/運転資金1,000万円 金利は変動制(茨城県信用保証協会公表の基準による)。保証料は「坂東市中小企業事業資金融資保証料助成規則」により市が全額負担

利子補給制度の有無については公式ページ上で確認できませんでした。融資を検討する際は、商工観光課(0297-20-8666)に直接お問い合わせください。

6-4. 相談窓口・コワーキング

窓口 所在地 連絡先
坂東市商工会 坂東市岩井3230-1 0297-35-3317(FAX 0297-35-3321)
坂東市商工観光課 坂東市役所3階 0297-20-8666

コワーキング/インキュベーション施設:市内に公的なコワーキング施設は確認できませんでした。令和7年4月に開業した産業経済交流施設「坂東将門の里」(坂東市長須9621-1)は農産物直売所・観光交流拠点としての性格が強く、ワークスペース機能を持つ施設としては案内されていません。


7. 開業手続きの窓口

飲食店営業許可:坂東市は保健所を設置していないため、茨城県古河保健所が窓口です(古河市・坂東市・境町・五霞町の2市2町を管轄)。 所在地:〒306-0005 茨城県古河市北町6-22/電話:0280-32-3021

法人市民税:法人税割は8.4%(制限税率、令和元年10月1日以後開始事業年度)。均等割は資本金1,000万円以下・従業員50人以下の区分で年60,000円です。8.4%を適用する市町村は水戸市・取手市・筑西市・大洗町・笠間市・守谷市・石岡市・龍ケ崎市・常総市・つくばみらい市・那珂市など県内に多く、坂東市もこの水準に含まれます(標準税率6.0%を適用するのは牛久市・神栖市・鹿嶋市・阿見町など一部にとどまります)。

事業所税:事業所税は人口30万人以上の指定都市等が課税団体となる税で、坂東市(人口約5.1万人)は課税団体に含まれません。


8. 坂東市で創業するときのチャンスとリスク

チャンス

  1. 人口減少率−1.8%は県内でも小さい部類 ― 自然減は大きいものの社会増(転入超過)が一定程度これを相殺しており、人口が急激に縮む街ではありません。
  2. 農業産出額238.4億円・県内5位、第1次産業就業者10.57% ― レタス754ha・ねぎ491haという露地野菜の一大産地で、食品加工・直売・農業関連サービスの土壌が厚いです。
  3. 圏央道坂東IC沿線に4つの工業団地 ― フロンティアパーク坂東にはまだ分譲区画が残っており、物流適地を探す事業者には実用的な選択肢です。工場誘致奨励金(固定資産税相当額を3年間交付、増設時は上限5,000万円)や工業団地企業社宅整備補助(1戸20万円・1棟上限400万円)といった立地優遇策もあります。
  4. ミュージアムパーク茨城県自然博物館という集客核 ― 敷地約15.8万㎡の同館は令和7年度に年間入館者50万人を突破(開館以来4回目)。市全体の観光入込客数は604,200人(令和6年)で、集計年度は異なるものの、この1施設が市の観光集客の大半を占めているとみられます。周辺での飲食・土産・体験系ビジネスの集客拠点として存在感が大きい施設です。

リスク

  1. 鉄道駅が市内にない ― 県内で鉄道が通っていないのは坂東市と稲敷市のみ。駅前商圏という発想は成立せず、車での来店・アクセスを前提にした立地設計が必須です。
  2. 自然減が年548人(令和6年)と大きい ― 社会増でカバーされているとはいえ、出生数192人に対し死亡数740人という構造は今後も続く可能性が高く、長期的な市場縮小リスクは無視できません。
  3. 本店登記を確認できた地場企業は3社にとどまる ― 工業団地には多数の企業が立地していますが、多くは市外に本社を置く「進出企業」で、BtoB営業先としての坂東市発の企業ネットワークは他市に比べて薄いといえます。
  4. コワーキング施設が見当たらない ― IT・クリエイティブ系の小規模創業者にとっては、作業スペースや異業種交流の拠点を自前で確保する必要があります。
  5. 補助金の募集期間が不透明 ― 創業支援事業費補助金は年度・上限額は明確な一方、具体的な募集開始・締切日が公式ページで確認できませんでした。動き出す前に必ず商工観光課へ確認してください。

坂東市で創業を考えるなら、まず特定創業支援等事業の証明取得(登録免許税半減+保証枠拡大)を起点にしつつ、農業関連・工業団地関連のBtoBという坂東市らしい市場を早い段階で検討することが、データから見える現実的な戦略です。


データ出典

免責:補助金・融資制度は年度ごとに内容や募集状況が変わります。申請前に必ず各窓口(坂東市商工観光課 0297-20-8666、坂東市商工会 0297-35-3317 ほか)で最新情報をご確認ください。本記事の数値は2026年7月31日時点で公表されていたデータに基づいています。

ABOUT ME
佐藤
佐藤
税理士・公認会計士
東京都立大学(旧・首都大学東京)を卒業後、KPMGあずさ監査法人に入所。銀行・証券会社をはじめとする日系金融機関を中心に、監査業務に従事してまいりました。その後、茨城県つくば市にて税理士事務所を開設し、現在に至ります。
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