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【常陸大宮市】創業・起業のための地域データガイド|人口・産業・支援制度でわかるビジネス環境

佐藤

茨城県北部に位置する常陸大宮市は、平成16年に1町4村が合併して誕生した、県内でも面積の広い自治体です。ただし「常陸大宮市で開業する」と一括りにするのは早計で、合併前の旧町村ごとに人口減少のペースがまったく違います。人口・産業・企業・支援制度のデータから、創業予定者の視点で整理しました。

この記事でわかること

  • 常陸大宮市全体の人口規模・年齢構成と、そこから読み取れる客層
  • 合併後の旧5町村(大宮・山方・美和・緒川・御前山)で人口減少率に大きな差があること
  • 産業構造と、畜産を中心とした農業の実態
  • 常陸大宮市に本社を置く主要企業=取引先候補
  • 創業時に使える補助金・融資・相談窓口の具体的な金額と窓口

1. 常陸大宮市の基本プロフィール

項目 データ 基準時点
人口 35,735人(県内29位) 令和7年国勢調査 速報値
世帯数 15,149世帯 同上
人口増減(令和2年比) −3,532人(−9.0%) 同上
1世帯当たり人員 2.36人 同上
面積 348.45km²(県内でも広い市域) 令和8年1月1日
人口密度 101.9人/km² 令和8年4月1日
高齢化率(65歳以上) 41.3% 令和7年10月1日現在
昼夜間人口比率 95.0(県内18位) 令和2年国勢調査
1人当たり市町村民所得 295.3万円 令和5年度

2. 人口データで読む常陸大宮市

2-1. 人口規模と推移

令和7年国勢調査の速報値で、常陸大宮市の人口は35,735人。令和2年から3,532人(−9.0%)の減少です。茨城県全体の減少率(−2.6%)と比べても、常陸大宮市の減少ペースは速いといえます。

令和7年(2025年)1年間の内訳を見ると、出生122人・死亡716人で自然増減は−594人、転入946人・転出1,071人で社会増減は−125人、合計−719人の減少でした。参考として令和8年1〜6月の半年間でも自然増減−277人・社会増減−59人で、減少局面が続いています。

創業時の目線:人口は速いペースで減っていますが、後述のとおり減り方は市内で一様ではありません。「常陸大宮市=人口減少市場」と単純化せず、どのエリアの数字を見ているかを常に意識する必要があります。

2-2. 年齢構成 ― 誰が住んでいる街か

令和7年10月1日時点で、年少人口(0〜14歳)8.5%、生産年齢人口(15〜64歳)50.2%、老年人口(65歳以上)41.3%。パイロット記事で紹介した水戸市の高齢化率27.9%と比べても、13ポイント以上高い水準です。

創業時の目線:高齢者向けサービス(訪問介護・調剤・生活支援・移動販売など)は市全体で底堅い需要が見込めます。一方で現役世代・子育て世代を狙う業態は、後述する大宮地域など人口が相対的に厚いエリアへの絞り込みが前提になります。

2-3. 世帯構成 ― 単価と客層を決める要素

1世帯当たり人員は2.36人で、県平均(2.29人)よりやや大きめです。水戸市の2.10人(県内最少)と比べると、複数人世帯が相対的に残っている構造がうかがえます。

創業時の目線:ファミリー向けの商品設計・容量設計が、県央の都市部よりは受け入れられやすい可能性があります。ただし世帯数自体は15,149世帯と少なく、絶対数のシミュレーションは慎重に行うべきです。

2-4. 昼間人口と商圏 ― 「住んでいる人」だけが客ではない

令和2年国勢調査では、常陸大宮市の昼間人口は37,315人、夜間人口39,267人で、昼夜間人口比率は95.0(県内18位)。夜間人口より昼間人口が1,952人少なく、日中は人が市外へ流出する構造です。

通勤の実態を見ると、常陸大宮市から水戸市への通勤者は1,799人、水戸市から常陸大宮市への通勤者は847人(令和2年10月1日現在)。市外へ通勤・通学する人は19,689人中8,224人(41.8%)で、うち水戸市への流出が2,327人(流出全体の28.3%)を占めます。鉄道では、常陸大宮駅の1日平均乗車人員は786人(令和6年度、定期599人・定期外186人)です。

創業時の目線:常陸大宮市は水戸市への通勤依存度が高く、平日日中の在住者向けサービスは市外流出分だけ目減りする前提で考える必要があります。逆に、朝夕の駅・幹線道路利用者を狙う業態(軽食・弁当・クリーニング取次など)には一定のチャンスがあります。

2-5. 外国人・特徴的な層

外国人住民は481人(令和6年6月30日現在)。国籍別ではベトナム123人、インドネシア59人、中国53人、フィリピン49人、タイ40人、韓国39人、ブラジル24人、ネパール15人、スリランカ13人、パキスタン11人、その他55人と分散しています。なお、総人口との同一基準日データがないため、人口に占める割合はここでは示しません。

創業時の目線:ベトナム・インドネシアなど技能実習・特定技能人材の比率が高い国籍構成です。製造業・農業の現場に外国人材が一定数関わっている可能性があり、生活支援サービスや多言語対応には潜在需要があります。


3. エリア別の特徴 ― どこで開業するかで別のビジネスになる

常陸大宮市は平成16年(2004年)10月16日、那珂郡の大宮町・山方町・美和村・緒川村と、東茨城郡の御前山村が合併して誕生しました。1町4村の合併で、面積348.45km²という県内でも広い市域を持つに至った経緯があります。

この記事で最も強調したいのは、合併後の人口減少率が地域ごとにまったく違うという事実です。合併日(平成16年10月16日)から令和8年(2026年)7月1日までの常住人口の変化を、旧町村単位でまとめました。

地域(旧町村) 合併日人口 令和8年7月人口 減少率
大宮(旧大宮町) 27,263人 22,898人 −16.0%
山方(旧山方町) 7,646人 4,780人 −37.5%
美和(旧美和村) 4,351人 2,415人 −44.5%
緒川(旧緒川村) 4,512人 2,518人 −44.2%
御前山(旧御前山村) 4,307人 2,737人 −36.5%
市計 48,079人 35,348人 −26.5%

市中心部にあたる大宮地域の減少率−16.0%に対し、山方−37.5%、美和−44.5%、緒川−44.2%、御前山−36.5%と、周辺4地域は市全体平均(−26.5%)を大きく上回るペースで人口が減っています。その結果、令和8年7月1日時点で市人口の64.8%(22,898人/35,348人)が大宮地域に集中しています。

創業時の目線:常陸大宮市を一つの商圏として扱うのは危険です。「常陸大宮市の人口3万5千人」という数字を見て出店を判断するのではなく、候補地が大宮地域か、それとも周辺4地域かで、想定すべき人口動態がまるで違うことを前提に商圏調査を行ってください。

① 大宮地域:国道118号・293号の交点にあたり、JR常陸大宮駅、市役所、中心市街地、水戸北部中核工業団地が立地する都市機能の中心です。医療・商業機能もここに集中しており、市内で最も人口減少が緩やかなエリアです。市の駅周辺資料でも、駅前ロータリーの狭さや商店街の空き店舗増加は課題とされる一方、駅周辺地区の人口・世帯は市全体の減少に対して横ばい〜増加傾向とされています。

② 山方地域:JR水郡線と国道118号沿いの北部軸で、山方宿・中舟生・下小川の3駅があります。久慈川沿いの水田地帯と山間部が併存する地域です。

③ 美和地域:市北西部の山間地域で、鉄道駅はなく地域センター(旧美和村役場)が生活拠点になっています。

④ 緒川地域:国道293号沿いの中西部にあたり、鉄道駅はなく緒川地域センター周辺が地域拠点です。

⑤ 御前山地域:国道123号と那珂川沿いの南西部で、鉄道駅はなく御前山地域センター周辺が地域拠点です。道の駅常陸大宮〜かわプラザ〜(岩崎717-1、平成28年3月開設)があり、令和6年度のレジ通過人数は585,257人にのぼります。

創業時の目線:周辺4地域は人口減少が速い一方、道の駅みわ(令和6年度91,736人)、三太の湯・ささの湯・四季彩館の温浴3施設(合計277,452人)など観光・交流人口を取り込む施設が機能しています。住民の日常需要を狙う業態と、観光・交流人口を狙う業態は、周辺4地域では明確に分けて採算設計すべきです。

市全体の観光入込客数は1,287,700人(令和6年、前年比99.2%)で、ゴルフ場利用者は含みません。

農業面では、産出額89.0億円(令和5年)のうち畜産が59.0億円(66.3%)を占め、統計上の主力は畜産(特に肉用牛44.0億円、49.4%)です。米は14.2億円で、果実は合計0.8億円にとどまり、りんご単独の産出データは公表されていません。奥久慈しゃも(地理的表示=GI登録)は大子町・常陸大宮市・常陸太田市・高萩市の共有ブランドで、市単独の生産量・産出額は未取得です。


4. 産業構造 ― この街のお金はどこから来るのか

4-1. 産業別の就業者構成

令和2年国勢調査ベースで、第1次産業8.30%、第2次産業30.40%、第3次産業61.31%。県都・水戸市(第1次2.33%/第2次18.65%/第3次79.01%)と比べると、農業・製造業の比重が明らかに高い構造です。

4-2. 事業所数と従業者数

市全体の経済センサスに基づく事業所数・従業者数の一次資料は、本記事の調査範囲では確認できませんでした(該当データなし)。以下の4-4で製造業に絞ったデータを示します。

4-3. 商業(卸売・小売)の市場規模

年間商品販売額は515億円(令和2年、茨城県「市町村のデータ」)。水戸市(約1兆5,687億円)と比べれば小規模で、市内で完結する商圏に依存した商業構造といえます。

創業時の目線:小売・飲食で大宮地域に出店する場合、市内で完結する購買力を前提にした規模感の見積もりが必要です。広域集客に頼るビジネスモデルは、常陸大宮市単独では成立しにくいと考えたほうが安全です。

4-4. 製造業・農業など地域の基幹産業

製造業は96事業所・従業者4,267人(令和6年6月1日現在、従業者4人以上)、製造品出荷額等は約1,291億円(令和5年)。従業者数の上位業種は業務用機械791人、プラスチック製品618人、食料品595人、輸送用機械452人、電気機械320人、電子部品等305人です。

工業団地は、水戸北部中核工業団地(総面積157.9ha、立地企業一覧40社)が市の令和8年度事業評価で全区画売却済み、常陸太田市と共同運営の宮の郷工業団地も常陸大宮市域(19.4ha、3区画)は全区画契約済みとなっています。

創業時の目線:既存の工業団地は既に埋まっており、製造業で新規に土地を確保するなら、団地外の民有地や空き工場を市に照会する必要があります。取引先候補としては、業務用機械・プラスチック・食料品の集積を意識した営業リストが有効です。


5. 常陸大宮市を代表する企業 ― 取引先候補として

登記上の本店が市内にある主な企業です(法人番号で照合)。

企業名 事業内容 所在地
富士フイルムオプティクス株式会社 光学レンズ等 東野4112
有限会社盛金製作所 精密板金・電子機器組立 盛金1454
茨城通運株式会社 貨物運送・石油・ガス 工業団地26-1
大野ロール株式会社 圧延機等 工業団地5-9
株式会社末広電装 自動車電装部品 工業団地21
根本酒造株式会社 酒類製造 山方630
株式会社野上製材所 製材 山方1315
株式会社ひたち農園 鶏卵生産・加工・販売 大岩1463-15

工業団地には本店が市外の進出企業も多数立地しています。グリコマニュファクチャリングジャパン茨城工場、アサヒグループ食品茨城工場、未来工業茨城工場、三甲関東第3・4・7工場などで、いずれも登記上の本店は市外(大阪市、東京都墨田区、岐阜県など)にあります。

創業時の目線:本社機能を持つ企業は少ないものの、大手食品・生活関連メーカーの生産拠点が集積しています。物流・資材・保守・給食など、工場の稼働を支えるBtoBサービスには一定の需要が見込めます。


6. 創業支援制度とお金の話

6-1. 特定創業支援等事業 ― まず最初に取るべき証明

常陸大宮市は産業競争力強化法に基づく創業支援等事業計画の認定を受けています(平成28年12月26日認定、令和5年12月25日変更認定)。常陸大宮市商工会の「創業支援セミナー」(1か月以上・4回以上、経営・財務・人材育成・販路開拓の全講義受講)を修了すると、市の証明書を申請できます。

優遇内容 具体的な効果
登録免許税の軽減 株式会社・合同会社の税率が0.7%→0.35%(合名・合資会社は令和6年4月1日から対象外)
創業関連保証の特例 申込を通常の事業開始2か月前から6か月前へ前倒し
日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金の利率引き下げ

窓口:常陸大宮市 商工観光課 商工振興グループ(中富町3135-6 本庁2階)0295-52-1111

6-2. 常陸大宮市独自の補助金

制度名 上限額 補助率 令和8年度の状況
常陸大宮市創業支援補助金 新規創業100万円/新事業・市内新事業所50万円 1/3以内 申請期間 令和8年4月1日〜12月31日(予算残は未取得)
常陸大宮駅周辺活性化支援事業費補助金 200万円 1/2以内 申請期間 令和8年4月1日〜12月31日、予算200万円・1件想定

創業支援補助金は、市内事業所・営業3年以上・年間200日以上かつ1日3時間以上の営業・年度内創業・セミナー受講(または翌年度予定)・商工会加入などが要件です。駅周辺活性化支援事業費補助金は、指定区域内の小売、飲食、持帰り・配達飲食、洗濯・理美容・浴場などの生活関連サービスが対象で、創業後2年未満の事業者も対象に含まれます。いずれも交付決定前の支出は対象外で、事前相談が必要です。

6-3. 融資

制度 限度額 条件
振興金融 2,000万円 設備・運転とも7年以内、窓口は常陸大宮市商工会
自治金融 1,000万円 同上

いずれも茨城県信用保証協会へ支払う保証料は市が全額補給します。固定金利の水準は現行規則に記載がなく、申込時に窓口で確認が必要です。

6-4. 相談窓口

常陸大宮市商工会:南町1104-4、電話0295-53-3100。創業・事業承継相談を無料・秘密厳守で受け付けています。専用のコワーキング・インキュベーション施設は、本記事の調査時点では確認できませんでした。


7. 開業手続きの窓口

  • 飲食店営業許可など:管轄は茨城県ひたちなか保健所 常陸大宮支所(姥賀町2978-1/0295-52-1157)です。
  • 法人市民税:法人税割6.0%(標準税率)。均等割は資本金等1,000万円以下・市内従業者50人以下で年50,000円
  • 事業所税:東京都主税局が公表する事業所税課税団体77団体の一覧に常陸大宮市は含まれておらず、課税対象ではないと考えられます。ただし市による非課税の明示は確認できていないため、大規模事業所を計画する場合は市へご確認ください。
  • 移住・起業支援:U-29 Uターン就職支援金(市出身者50万円・出身者以外30万円、起業も対象)、住宅取得奨励金(新築・新築住宅購入50万円、世帯全員転入で20万円加算等)。

8. 常陸大宮市で創業するときのチャンスとリスク

チャンス

  1. 大宮地域への人口集中(64.8%) ― 中心市街地・駅・工業団地が一体となったエリアで、市内では相対的に人口動態が安定
  2. 工業団地が全区画契約済み ― 製造業の集積があり、部品・資材・保守など周辺BtoB需要が見込める
  3. 農業産出額の66.3%が畜産 ― 肉用牛を軸に、加工・直売・観光農園などの余地がある
  4. 創業支援補助金+駅周辺活性化補助金の併用余地 ― 駅周辺での小売・飲食・生活関連サービス開業は上限200万円の補助を狙える

リスク

  1. 人口減少率−9.0%(令和2年比)は県平均−2.6%より速く、高齢化率41.3%も高水準
  2. 周辺4地域(山方・美和・緒川・御前山)は減少率が市平均を大きく上回る(−37.5%〜−44.5%)。エリアを誤ると想定より速く市場が縮小する
  3. 昼夜間人口比率95.0で、日中は人口が市外(主に水戸市)へ流出する構造
  4. 市全体の事業所数・従業者数の一次資料が限られるため、商圏調査は現地の実測を併用する必要がある

創業を検討する場合、まずは特定創業支援等事業の証明取得(登録免許税半減+保証枠の前倒し)を最初のステップに置いたうえで、候補地が大宮地域か周辺4地域かによって商圏の前提を変えて計画することが、常陸大宮市では特に重要です。


データ出典

免責:補助金・融資制度は年度ごとに内容や募集状況が変わります。申請前に必ず各窓口(常陸大宮市商工観光課 0295-52-1111、常陸大宮市商工会 0295-53-3100 ほか)で最新情報をご確認ください。本記事の数値は2026年8月8日時点で公表されていたデータに基づいています。

ABOUT ME
佐藤
佐藤
税理士・公認会計士
東京都立大学(旧・首都大学東京)を卒業後、KPMGあずさ監査法人に入所。銀行・証券会社をはじめとする日系金融機関を中心に、監査業務に従事してまいりました。その後、茨城県つくば市にて税理士事務所を開設し、現在に至ります。
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