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【常陸太田市】創業・起業のための地域データガイド|人口・産業・支援制度でわかるビジネス環境

佐藤

茨城県北部に位置する常陸太田市は、県内で最も面積が広い市でありながら、令和7年国勢調査では人口減少率−9.9%と県内でも最大級の減少幅を記録しました。人口密度は水戸市の10分の1以下で、市場としての規模は率直に言って小さいのが実情です。その一方で、中小企業向け補助金や移住・就農支援は県内でも屈指の手厚さを誇ります。「市場は小さいが、支援と移住コストの安さで勝負する街」――そんな常陸太田市で創業する意味はどこにあるのか、人口・産業・企業・支援制度のデータから、創業予定者の視点で整理しました。

この記事でわかること

  • 常陸太田市の人口規模・年齢構成と、県内でも最大級の人口減少・高齢化の実態
  • 面積371.99km²(県内最大)と人口密度116.5人/km²から見える「商圏の考え方の違い」
  • 旧市街地・金砂郷・水府・里美、4地区それぞれの人口とビジネス環境の差
  • 産業構造と、年間商品販売額431億円という市場規模のリアルな位置づけ
  • 創業時に使える補助金・融資・移住支援制度の具体的な金額と窓口

1. 常陸太田市の基本プロフィール

項目 データ 基準時点
人口 43,813人(県内23位) 令和7年国勢調査 速報値
世帯数 18,513世帯 同上
人口増減(令和2年比) −4,789人(−9.9%、県内でも最大級の減少率) 同上
1世帯当たり人員 2.37人 同上
面積 371.99km²(茨城県内で最も広い市 令和8年1月1日
人口密度 116.5人/km²(基準人口:常住人口43,349人) 令和8年4月1日
高齢化率(65歳以上) 43.4% 令和7年10月1日推計
昼夜間人口比率 85.1 令和2年国勢調査
年間商品販売額 431億円 令和2年
1人当たり市町村民所得 2,828千円 令和5年度

2. 人口データで読む常陸太田市

2-1. 人口規模と推移

令和7年国勢調査速報値で、常陸太田市の人口は43,813人(県内23位)。令和2年から4,789人減少し、減少率は−9.9%です。茨城県全体の減少率が−2.6%であるのに対し、常陸太田市の−9.9%は突出して大きく、公表されている数値では河内町(−13.1%)、大子町(−12.9%)、桜川市(−10.0%)に次ぐ水準で、県内でも最大級の減少率です。

減少の内訳を直近1か月(令和8年7月)のスナップショットで見ると、出生12人・死亡57人で自然減45人、転入83人・転出93人で社会減10人。自然減が社会減の4.5倍にのぼり、高齢化率43.4%という人口構造から見ても、5年間の−9.9%も自然減(死亡超過)が主因である可能性が高いと考えられます。転出超過による社会減も一定はありますが、それ以上に「亡くなる人の数が生まれる人の数を大きく上回る」構造そのものが、人口減少の根本にあります。

創業時の目線:転出超過よりも自然減が主因ということは、市外からの人の流出を止めれば解決する問題ではありません。今いる顧客が高齢化とともに自然に減っていく前提でビジネスを組み立てる必要があり、既存人口だけに依存しない商圏設計(後述の昼夜間人口・移住者の取り込み)が必須になります。

2-2. 年齢構成 ― 誰が住んでいる街か

令和7年10月1日時点の推計では、年少人口(0〜14歳)8.1%、生産年齢人口(15〜64歳)48.4%、老年人口(65歳以上・高齢化率)43.4%。令和2年国勢調査時点(8.9%/52.4%/38.7%)と比べると、わずか5年で高齢化率が4.7ポイントも上昇しています。43.4%という高齢化率は今回のシリーズで調べてきた茨城県内の市町村の中でも突出した水準で、年少人口8.1%の低さも際立ちます。

創業時の目線:高齢者向けサービス(訪問介護、送迎、生活支援、終活)の需要は今後も伸び続ける一方、子育て・教育関連の市場は縮小が避けられません。ファミリー向け業態より、シニア単身・高齢夫婦世帯を主要顧客に据えた業態設計のほうが、この街では現実的です。

2-3. 世帯構成 ― 単価と客層を決める要素

世帯数18,513世帯、1世帯当たり人員は2.37人で、県平均(2.29人)よりやや多めです。単身世帯化が県内トップクラスで進む水戸市(2.10人)とは対照的に、常陸太田市では複数世代同居や高齢夫婦世帯が一定の比率を保っていると読み取れます。

創業時の目線:極端な単身世帯向け商品よりも、多少のまとめ買い・世帯単位の消費に対応した商品設計のほうが受け入れられやすい可能性があります。ただし世帯数自体が少ないため、単価設計よりもまず「絶対数の少なさ」を前提にした事業計画が必要です。

2-4. 昼間人口と商圏 ― 「住んでいる人」だけが客ではない

令和2年国勢調査では、昼間人口41,370人、夜間人口48,602人で、昼夜間人口比率は85.1。つまり日中は市外へ働きに出る人のほうが多く、市内で完結する消費活動は夜間・休日に偏る傾向があります。

通勤流出は日立市へ4,122人(最多)、水戸市へ2,194人(第2位)。逆に通勤流入は日立市から914人、常陸大宮市から892人です。通学も水戸市へ664人、日立市へ307人と、JR水郡線で常陸太田駅から水戸駅まで約30分というアクセスの良さが、日立・水戸への人の流れを支えています。

ここで押さえておきたいのが、面積371.99km²(県内最大)に対して人口密度はわずか116.5人/km²という点です。水戸市の人口密度1,219.6人/km²と比べると10分の1以下。同じ「市」でも、水戸市が「徒歩・自転車圏で商圏が成立する街」であるのに対し、常陸太田市は「車での移動が前提の街」です。この違いを理解せずに立地を決めると、思っていたより来店客が集まりません。

創業時の目線:市内の顧客だけを狙うなら、車での来店を前提にした立地・駐車場の確保が必須です。一方で、日立市・水戸市への通勤者が多いということは、朝夕の国道沿いや駅前で「通勤導線を押さえる」業態(テイクアウト、クリーニング、コンビニ的サービス)には勝ち筋があります。

2-5. 外国人住民

外国人住民数は174人(総人口比0.4%)で、平成27年の99人から75人増加しています。国籍別ではベトナムが49人と最多です(いずれも令和2年国勢調査時点、これより新しい時点のデータは今回確認できませんでした)。

創業時の目線:外国人比率0.4%は県内でも低い水準で、エスニック業態や多言語対応ビジネスを単独で成立させるには市場が小さすぎます。むしろ増加傾向にある技能実習生・特定技能人材向けの生活支援サービスなど、ニッチな需要を狙う考え方のほうが現実的です。


3. エリア別の特徴 ― どこで開業するかで別のビジネスになる

常陸太田市は2004年(平成16年)12月1日、旧常陸太田市が金砂郷町・水府村・里美村を編入合併して現在の市域になりました。地区ごとの性格差が大きく、「常陸太田市で開業する」と一括りにはできません。

令和2年国勢調査による地区別人口は、常陸太田地区32,754人(67.4%)、金砂郷地区9,117人(18.7%)、水府地区3,973人(8.2%)、里美地区2,758人(5.7%)。市の人口の3分の2は旧市街地に集中しており、残り3分の1が金砂郷・水府・里美の3地区に分散する構造です。

特に山間部にあたる水府地区・里美地区は、高齢化率がともに50%を超え、人口の半数以上が高齢者という状況です(令和3年10月1日現在)。旧市街地とこの2地区とでは、もはや別の街として商圏を考える必要があります。

中心市街地・鯨ケ丘商店街は、明治期には葉たばこ市場を中心に繁栄した歴史ある商店街ですが、昭和50年代以降、公共施設の移転や郊外の大型店進出の影響で徐々に衰退し、空き店舗が増えました(具体的な空き店舗率のデータは今回確認できませんでした)。商店会と常陸太田市商工会が連携し、空き店舗を活用した直営店「くじら屋」(平成14年開店)、「いも屋」(平成15年開店)を開設するなど、再生に向けた取り組みが続いています。

観光面では、竜神大吊橋(橋長375m、地上高100m、平成6年開通、駐車場250台)が市を代表する観光資源です。年間来場者数は今回の調査では確認できませんでしたが、常陸太田市全体の観光入込客数は1,374,200人(令和6年、前年比98.1%)です。

公共交通では、乗合タクシー(デマンドタクシー)が常陸太田・金砂郷・水府の3地区で運行されており、令和2年度の月平均利用者数は常陸太田地区167人、金砂郷地区248人、水府地区189人。利用目的は買い物と通院が中心で、地域の買い物弱者対策そのものが行政課題になっている地域であることがうかがえます。

創業時の目線:旧市街地は昔ながらの商店街としての集客力低下と向き合う必要がある一方、水府・里美地区は「顧客が減り続ける市場」というより「もはや商業施設そのものが不足している市場」に近く、移動販売・御用聞き型のビジネスにはむしろ余地があります。エリアを一括りにせず、どの地区の、どの客層を狙うかを最初に決めることが重要です。


4. 産業構造 ― この街のお金はどこから来るのか

4-1. 産業別の就業者構成

令和2年国勢調査ベースで、第1次産業7.89%、第2次産業27.15%、第3次産業64.96%。県都・水戸市(第3次産業79.01%)と比べると第1次・第2次産業の比率が高く、農業と製造業が一定の存在感を持つ産業構造です。

4-2. 事業所数・従業者数

市全体の事業所数・従業者数の一次データは今回確認できませんでした。公表され次第、別途反映します。

4-3. 商業(卸売・小売)の市場規模

茨城県「市町村のデータ」による年間商品販売額は431億円(令和2年)。他市との比較は以下のとおりです。

市町村 年間商品販売額(令和2年)
水戸市 1兆5,687億円
日立市 3,176億円
ひたちなか市 3,072億円
常総市 1,162億円
小美玉市 1,162億円
下妻市 1,108億円
牛久市 1,058億円
笠間市 1,012億円
結城市 920億円
那珂市 772億円
坂東市 766億円
鉾田市 652億円
常陸太田市 431億円
(参考)大洗町 160億円

常陸太田市の431億円は、今回このシリーズで調べてきた市の中では最小級で、水戸市の36分の1にとどまります。町である大洗町(160億円)を除けば、市の中で最も小さい規模です。これは正直に受け止めるべき数字で、「地元消費だけで大きく儲ける」タイプの商売は成立しにくい市場規模だといえます。

4-4. 製造業・農業 ― 地域の基幹産業

製造品出荷額等は423億円(令和5年、従業員4人以上事業所)。市内には2つの工業団地があります。

  • 宮の郷工業団地(常陸太田市宮の郷町/常陸大宮市宮の郷にまたがる):総面積90.9ha、分譲可能面積2.5ha、立地企業16社(木材関連産業が中心)
  • 常陸太田工業団地(常陸太田市岡田町):総面積45.7ha、完売、立地企業20社以上

※これらはいずれも工場・事業所として市内に進出している企業であり、本社(本店)が常陸太田市にあるかどうかは別途確認が必要です。本記事の「5. 代表企業」では本店所在地を確認できた企業のみを掲載しています。

農業では、常陸太田市は「常陸秋そば」発祥の地として知られています。市公式サイトによれば、茨城県が1978年(昭和53年)に品種育成に着手した際、旧金砂郷村(現・常陸太田市金砂郷地区)に伝わる在来種「金砂郷在来種」が採用され、選抜を重ねた末に誕生したのが常陸秋そばです。このほか、JA常陸太田ぶどう部会が組織化されているぶどう産地としての一面、常陸牛の生産にも一部関与しています。ただし、農業産出額そのものの金額は今回確認できませんでした。

創業時の目線:市場規模は小さくても「そば発祥の地」というブランドストーリーは強力な差別化材料です。地元だけで売る発想ではなく、常陸秋そば・ぶどうといった一次産品のブランド力を使って、市外・県外の顧客を呼び込む/通販で売るという「域外市場を狙う」発想が、この街での創業には向いています。


5. 常陸太田市を代表する企業 ― 取引先候補として

常陸太田市に本店(本社)を置くことを確認できた企業は、以下の4社にとどまります。ほかにも市内に事業所を置く企業は多数ありますが、本店登記まで確認できたのは限られるというのが実情です。

企業名 業種 概要・所在地
常陸農業協同組合(JA常陸) 農業協同組合 常陸太田市山下町3889/TEL 0294-72-9111
株式会社かわねや スーパー・食品小売 常陸太田市木崎二町874番地/1969年設立
株式会社三友製作所 分析機器関連製品製造 常陸太田市馬場町457/1974年設立
常陸化工株式会社 食品関連製造 常陸太田市新宿町664

なお、宮の郷工業団地・常陸太田工業団地に立地する大豊化学工業、品川重工、中国木材、茨城リネンサプライなどの企業は、市内に工場・事業所を構える進出企業であり、本店所在地が常陸太田市かどうかは確認できていません。取引先候補として考える際は、本店(意思決定の所在地)と事業所(実際の稼働拠点)を区別して捉える必要があります。

創業時の目線:本店を置く企業の絶対数が少ないという事実は、BtoBで市内完結の取引先を探すには不利な材料です。一方でJA常陸のように地域の一次産業を束ねる組織が本店を構えている点は、農業関連・食品加工での連携を考えるなら重要な接点になります。


6. 創業支援制度とお金の話

6-1. 特定創業支援等事業 ― まず最初に取るべき証明

常陸太田市は特定創業支援等事業(創業セミナー)を実施しており、受講・支援を受けたことの証明書を交付しています。証明書の取得により、登録免許税の軽減など国の制度に基づく優遇を受けられるのが一般的な枠組みですが、常陸太田市における実施機関・優遇措置の詳細(講座内容や回数など)は、今回のページ取得では確認できませんでした。申し込み・詳細は下記窓口にお問い合わせください。

窓口:常陸太田市 商工振興・企業誘致課 TEL 0294-72-3111(内線621・622)

6-2. 常陸太田市独自の補助金 ― 県内でも屈指の手厚さ

市場規模の小ささとは対照的に、常陸太田市の中小企業支援策は充実しています。特に常陸太田市中小企業等ビジネスチャレンジ事業費補助金は7つの区分を持つ手厚い制度です。

事業区分 上限額 補助率
BCP関連支援(計画策定) 20万円 1/2
BCP関連支援(計画実践) 100万円 1/2
事業承継支援 100万円 1/2
空き店舗改修支援(改修費) 100万円 1/2
空き店舗改修支援(家財処分) 20万円 10/10(全額)
DX促進支援(機器購入は10万円上限) 20万円 2/3
経営革新支援(チャレンジ枠) 25万円 1/2
経営革新支援(経営革新枠) 50万円 1/2
技能訓練支援 従業員1名あたり3万円
販路拡大支援(国内) 20万円 1/2
販路拡大支援(国外) 50万円 1/2

令和8年度の状況:市公式サイトでは「予算が残りわずかな事業もある」と注記されており、申請前の事前相談が推奨されています。

このほか、UIJターン等新規起業支援事業費補助金(補助率1/2、上限50万円/年度、最長で起業3年度目まで交付)もあり、市外から移住して起業する人を明確に後押しする制度設計になっています。

創業時の目線:空き店舗改修の家財処分費用が補助率10/10(全額)というのは、鯨ケ丘商店街のような空き店舗を活用した出店を強く後押しする設計です。市場規模の小ささを補う「初期費用の軽さ」として、これらの補助金を組み合わせて使う発想が有効です。

6-3. 融資・制度融資

常陸太田市中小企業事業資金融資あっせん条例に基づく限度額は以下のとおりです(金利は条例本文に明記がなく、今回は確認できませんでした)。

融資制度 資金使途 限度額 融資期間
振興金融 設備資金 2,000万円 10年以内
振興金融 運転資金 1,000万円 10年以内
振興金融 設備運転併用資金 2,000万円 10年以内
自治金融 設備・運転・併用 各1,000万円 10年以内
特別小口保証 各種資金 500万円 10年以内

信用保証料については、常陸太田市中小企業信用保証料補給金交付要項により、被保証債務にかかる信用保証料の全額が補給されます(期限経過債務・延滞分は対象外)。利子補給の有無は今回確認できませんでした。

6-4. 相談窓口・コワーキング

窓口 所在地 連絡先
常陸太田市商工会 常陸太田市中城町3210 TEL 0294-72-5533/FAX 0294-72-5546
常陸太田市 商工振興・企業誘致課 市役所 TEL 0294-72-3111(内線621・622)

コワーキングスペース・インキュベーション施設については、今回の調査では市内に確認できる施設がありませんでした(コワーキング検索サイトでの常陸太田市エリア該当件数は0件)。法人登記やワークスペースが必要な場合、現時点では日立市・水戸市など近隣都市の施設と組み合わせて検討する必要がありそうです。


7. 開業手続きの窓口

飲食店営業許可等:常陸太田市は自前の保健所を持たず、ひたちなか保健所 常陸大宮支所(常陸大宮市姥賀町2978-1)が窓口です。管轄区域は常陸太田市、ひたちなか市、常陸大宮市、那珂市、那珂郡東海村、久慈郡大子町。電話番号は茨城県のホームページでご確認ください。

法人市民税法人税割は6.0%(標準税率)、均等割は資本金1,000万円以下・従業者数50人以下の区分で年額5万円です(市税条例で確認)。

法人税割の水準は自治体によって差があり、今回のシリーズで確認した範囲では次のように分かれます。

  • 8.4%(制限税率=超過課税):水戸市、取手市、筑西市、大洗町、笠間市、守谷市、石岡市、龍ケ崎市、常総市、つくばみらい市、那珂市、坂東市、結城市、小美玉市、下妻市
  • 6.0%(標準税率):牛久市、神栖市、鹿嶋市、阿見町、常陸太田市、鉾田市

常陸太田市は法人の税負担が軽い部類に入ります。均等割5万円という最小区分の税額と合わせ、小規模法人にとってはコストの低さがメリットです。

事業所税:市税条例に事業所税に関する規定はなく、事業所税の課税団体には該当しないと考えられます(事業所税は原則として人口30万人以上の指定都市等が対象で、常陸太田市の人口規模は要件を満たさないため)。


8. 常陸太田市で創業するときのチャンスとリスク

チャンス

  1. 支援制度が県内屈指に手厚い ― ビジネスチャレンジ事業費補助金の7区分(家財処分は補助率10/10)、UIJターン新規起業支援補助金、信用保証料の全額補給まで、小規模創業者を後押しする制度が揃っています。
  2. 移住コストの安さ ― お試し居住(1日2,000円、8日目以降1,000円)、空き家リフォーム助成(上限100万円、地域材使用で110万円)、里美白幡台団地の市有地無償譲渡+転入促進助成金最大100万円、新婚家庭家賃助成(月1万5千円×48か月)、住宅取得促進助成(最大90万円)など、生活コストを下げる制度が幅広くあります。新規就農支援も経営開始資金(年150万円、夫婦225万円)に加え、市独自の家賃助成やUIJターン就農奨励金、中古農機具・軽貨物車両の購入支援まで用意されています。
  3. 法人税負担が軽い ― 法人税割6.0%は、超過課税を採用する県内主要市(8.4%)と比べて明確に有利です。
  4. 「常陸秋そば発祥の地」というブランド ― 域外・県外顧客を狙う一次産品・食関連ビジネスには強い差別化材料になります。

リスク

  1. 人口減少率−9.9%は県内でも最大級。自然減が主因のため、今いる顧客が自然に減っていく前提を崩せません。
  2. 市場規模そのものが小さい ― 年間商品販売額431億円は今回調べた市の中でも最小級(水戸市の36分の1)。地元消費だけに依存するビジネスモデルは成立しにくい規模です。
  3. 人口密度116.5人/km²は水戸市の10分の1以下。徒歩・自転車圏の商圏は成立せず、車移動前提の立地計画が必須です。
  4. 高齢化率43.4%、年少人口8.1% という極端な人口構造。特に水府・里美地区は高齢化率50%超で、いずれ商業施設そのものが立ちゆかなくなる可能性があります。乗合タクシーが買い物・通院の足として使われている実態は、「買い物弱者対策」がすでに行政課題になっていることの表れです。

常陸太田市での創業は、「地元消費だけで稼ぐ」発想では厳しい戦いです。市場の小ささを直視したうえで、①補助金と生活コストの安さで固定費・初期費用を下げる、②車移動前提の商圏設計で市内顧客を確実に押さえる、③常陸秋そばなどのブランド資源やUIJターン就農支援で域外の顧客・移住者を呼び込む――この3つを組み合わせられるかが、常陸太田市で創業する意味を左右します。


データ出典

免責:補助金・融資制度は年度ごとに内容や募集状況が変わります。申請前に必ず各窓口(常陸太田市 商工振興・企業誘致課 0294-72-3111 内線621・622 ほか)で最新情報をご確認ください。本記事の数値は2026年7月31日時点で公表されていたデータに基づいています。

ABOUT ME
佐藤
佐藤
税理士・公認会計士
東京都立大学(旧・首都大学東京)を卒業後、KPMGあずさ監査法人に入所。銀行・証券会社をはじめとする日系金融機関を中心に、監査業務に従事してまいりました。その後、茨城県つくば市にて税理士事務所を開設し、現在に至ります。
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