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M&A・事業承継

デューデリジェンスとは?売り手の準備と対応

佐藤

「基本合意は終わったけど、これからの買収監査って何をされるんだろう?」

基本合意書を締結したあと、次に待っているのが「デューデリジェンス(DD)」と呼ばれるプロセスです。

買い手が弁護士や会計士などの専門家を使い、会社のあらゆる側面を徹底的に調査する、いわば本格的な買収監査ですね。

このDDは、売り手にとって精神的にも肉体的にも非常に負担の大きいプロセスだと言われています。

資料の準備、経営者へのヒアリング、日程調整など、やるべきことが一気に押し寄せてきます。

でも、安心してください。

事前にしっかりと準備をしておけば、乗り越えられないものではありません。

この記事では、デューデリジェンス(DD)の全体像と、売り手として押さえておくべき準備や対応の心得を解説していきます。

この記事でわかること

  • デューデリジェンス(DD)とは何か、その目的と全体像
  • DDで調査される主な領域(財務・法務・ビジネスなど)
  • 売り手が事前に準備しておくべき資料と整理のコツ
  • DD期間中に経営者が意識すべき対応の心得4つ
  • ネガティブ情報の開示がなぜ重要なのか
  • 従業員に気づかれないための秘密保持のポイント

「何を聞かれるのかわからなくて不安」という気持ちは、多くの経営者が抱えるものです。

順番に整理していけば大丈夫ですので、一つずつ確認していきましょう。

この記事の全体像

まず、この記事がどんな流れで進むのかを簡単にお伝えしておきます。

はじめに、DDに関する基本的な用語や前提知識を押さえます。

「デューデリジェンス」「表明保証」など、聞き慣れない言葉もありますが、かみ砕いて説明しますのでご安心ください。

次に、DDで実際にどんなことが調査されるのかを解説します。

財務・法務・ビジネスなど、調査の領域ごとにポイントを整理していきます。

そのあと、売り手として具体的に何を準備しておけばよいかをお伝えします。

ここが実務上もっとも大切なパートです。

最後に、DD期間中の対応の心得を4つにまとめます。

実際の場面でどう振る舞えばよいのか、具体的なイメージを持っていただけるはずです。

知っておくべき基礎知識

本題に入る前に、DDに関わる基本的なキーワードを整理しておきましょう。

デューデリジェンス(DD)

デューデリジェンスとは、英語で「Due Diligence」と書き、直訳すると「当然払うべき注意」という意味です。

M&Aの場面では、買い手が対象企業を買収する前に行う「本格的な調査・監査」を指します。

たとえるなら、住宅を購入する前に行う「建物検査」のようなものですね。

外から見たらきれいでも、基礎に問題がないか、配管は大丈夫か、シロアリはいないかを専門家に調べてもらうイメージです。

買い手はこの調査結果をもとに、最終的な買収価格や条件を決定します。

基本合意の段階で提示された価格は、あくまで「仮の価格」であり、DD後に変わることがあるという点を押さえておきましょう。

表明保証

表明保証とは、売り手が「この情報は事実です」と買い手に対して約束することです。

最終契約書に盛り込まれる重要な条項のひとつですね。

たとえば「未払いの税金はありません」「重大な訴訟は抱えていません」といった内容を、売り手が正式に表明します。

もしDDで開示しなかった問題が後から発覚すると、この表明保証に違反したとして損害賠償を請求されるリスクがあります。

だからこそ、DDの段階で誠実に情報を開示しておくことが重要なんですよね。

基本合意書(LOI)

基本合意書とは、買い手と売り手がM&Aの基本的な条件について合意した内容を書面にしたものです。

LOI(Letter of Intent)とも呼ばれます。

この基本合意を締結したあとに、DDが行われるという流れが一般的です。

基本合意には法的拘束力がない条項も多いため、「合意したから安心」ではなく、DDを経て初めて最終条件が固まるという認識を持っておくことが大切です。

買収監査チーム

DDは買い手が自社だけで行うものではありません。

公認会計士や税理士が財務面を、弁護士が法務面を、場合によっては経営コンサルタントがビジネス面をそれぞれ調査します。

売り手としては、複数の専門家から同時に質問や資料請求が来ることになります。

この「チーム対応」という感覚を事前に持っておくと、気持ちの準備ができますよ。

DDで調査される主な領域

デューデリジェンスでは、会社のさまざまな側面が調査されます。

すべてを網羅する必要はありませんが、代表的な領域を押さえておくと、何を聞かれるのかイメージしやすくなります。

財務デューデリジェンス

もっとも重点的に行われるのが、財務面の調査です。

過去の決算書や月次の損益データをもとに、会社の実態としての収益力や資産の状況を分析します。

帳簿上の数字だけでなく、「本当に回収できる売掛金はいくらか」「在庫に不良品は含まれていないか」「簿外の負債はないか」といった点が細かくチェックされます。

買い手にとっては、ここで得られた情報が最終的な買収価格の決定に直結するため、もっとも力を入れる領域だと言えるでしょう。

法務デューデリジェンス

法務面では、会社に潜む法的なリスクが調査されます。

具体的には、定款や登記簿の確認、株主構成の整理、各種契約書(取引先との契約、賃貸借契約、雇用契約など)のチェックが行われます。

訴訟やトラブルの有無、許認可の取得状況なども対象です。

「知らなかった」では済まされない法的リスクが隠れていることもあるため、弁護士が丹念に調べていくプロセスになります。

ビジネスデューデリジェンス

ビジネスDDでは、事業そのものの将来性や競争力が調査されます。

市場の動向、競合他社との比較、顧客基盤の安定性、主要取引先との関係性などが対象です。

「この事業は今後も伸びるのか」「買収後にどんなシナジーが見込めるか」を買い手が判断するための情報を集めるプロセスですね。

経営者へのヒアリングが中心になることが多く、事業の強みや課題について率直に聞かれる場面が出てきます。

その他の領域

規模や業種によっては、人事DD(従業員の雇用条件や退職金制度の確認)、税務DD(税務リスクの洗い出し)、IT関連のDDが行われることもあります。

すべてのDDが必ず実施されるわけではなく、案件の規模やリスクの度合いに応じて範囲が決まるのが一般的です。

売り手が事前に準備しておくべき資料

DDが始まると、買い手の調査チームから大量の資料請求が届きます。

このとき、資料がすぐに出せるかどうかで、DDのスムーズさが大きく変わってきます。

事前に整理しておくべき主な資料を、カテゴリーごとに見ていきましょう。

会社の基本情報に関する資料

  • 定款(最新版)
  • 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
  • 株主名簿
  • 組織図
  • 役員の経歴書

特に株主名簿は、株主の構成が複雑な場合に確認に時間がかかることがあります。

事前に最新の状態に整えておくことをおすすめします。

財務に関する資料

  • 過去3〜5年分の決算書(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)
  • 月次の損益データ(直近1〜2年分)
  • 税務申告書
  • 固定資産台帳
  • 借入金の一覧(金融機関別の残高と返済条件)

月次の損益データは、日常の経理業務でまとめていないケースもあります。

DDの前に整備しておくと、かなり対応がスムーズになりますよ。

契約関係の資料

  • 主要な取引先との契約書
  • 賃貸借契約書(事務所・店舗・工場など)
  • リース契約書
  • 雇用契約書・就業規則
  • 保険証券

特に注目されやすいのが「チェンジ・オブ・コントロール条項」の有無です。

これは、経営権が移ると契約が解除される可能性があるという条項のことですね。

主要取引先との契約にこの条項が入っている場合、買い手にとって大きなリスクになるため、事前に確認しておくことが重要です。

許認可・知的財産に関する資料

  • 事業に必要な許認可の一覧と証書
  • 特許・商標などの知的財産権の一覧

許認可が経営者個人に紐づいている場合、M&A後に取得し直す必要が出てくることがあります。

この点も事前に確認しておくと安心です。

資料整理のコツ

資料の量は膨大になりがちですが、完璧を目指す必要はありません。

大切なのは「すぐに取り出せる状態」にしておくことです。

カテゴリーごとにフォルダを分け、紙の資料はPDF化しておくと、買い手の調査チームにも共有しやすくなります。

資料が見つからない場合は、正直に「現時点では手元にない」と伝えればよいだけの話です。

無理に取り繕うよりも、誠実に対応することのほうがずっと大切ですね。

DD対応の心得4つ

資料の準備ができたら、次はDD期間中の「対応の心得」を押さえておきましょう。

実際のDDでは、資料の提出だけでなく、経営者としての姿勢や振る舞いも見られています。

ここでは、特に重要な4つの心得をお伝えします。

心得1:誠実な対応を貫く

DDにおいてもっとも大切なのは、「誠実であること」です。

不都合な事実、いわゆるネガティブ情報を隠したくなる気持ちは誰にでもあるかもしれません。

しかし、隠した情報がDD中に発覚した場合、買い手の信頼は一気に崩れてしまいます。

さらに厄介なのは、DDでは見つからなかったネガティブ情報が、買収完了後に発覚するケースです。

この場合、表明保証違反として損害賠償や減額請求を受けるリスクが生じます。

実は、ネガティブ情報を自ら開示したほうが、買い手の信頼を得やすいという側面もあります。

「この経営者は正直に話してくれる」という安心感は、条件交渉において大きなプラスに働くことが多いんですよね。

不都合な情報も隠さず開示することが最大の防御策です

心得2:事前に資料をすぐ出せる状態にしておく

先ほどのセクションで詳しく触れましたが、改めて強調しておきたいポイントです。

DDが始まると、買い手の調査チームから一度に何十項目もの資料請求が届くことがあります。

ここで「探すのに1週間かかります」が続くと、DD全体のスケジュールが遅れるだけでなく、買い手に「管理体制が不十分な会社なのでは」という印象を与えかねません。

定款、株主名簿、月次損益、各種契約書など、DDで求められる定番の資料は、基本合意の段階から少しずつ整理し始めておくのがベストです。

一気にやろうとすると大変ですが、少しずつ準備すれば十分に間に合います。

心得3:スケジュールを柔軟に確保する

DD期間中は、買い手の調査チームから経営者へのヒアリングが頻繁に行われます。

「来週の火曜日に2時間ほどお時間いただけますか」「追加で確認したいことがあるので、今週中にお電話してもよろしいですか」といった依頼が次々に入ってくるんですよね。

ここで「忙しくて無理です」が続くと、DDがどんどん長引きます。

DDが長引くと、買い手のモチベーションが下がったり、外部環境の変化でディールそのものが白紙に戻ったりするリスクも出てきます。

DD期間中は、できるだけ予定を柔軟に空けておくことを心がけましょう。

通常の業務もある中で大変ではありますが、M&Aの成功に向けた最も重要な時期だと割り切ることが大切です。

心得4:従業員への秘密保持に細心の注意を払う

DD期間中、もっとも気を使うべきなのが「従業員にM&Aを知られないこと」です。

DDでは、社内のさまざまな資料を用意したり、外部の専門家が来社したりする場面があります。

普段とは違う動きが増えるため、勘のいい社員は「何かおかしい」と気づく可能性があるんですよね。

M&Aの情報が従業員に漏れてしまうと、不安が一気に広がります。

「会社が売られるらしい」「自分たちは解雇されるのでは」といった噂が社内に広まると、退職者が出たり、取引先に情報が漏れたりと、ディールそのものに悪影響を及ぼすことがあります。

対策としては、DD対応チームを最小限のメンバーに絞り、チーム内で情報の取り扱いについて事前にしっかり取り決めておくことが重要です。

外部の専門家が来社する際には、「税務調査の対応」「新しい顧問との打ち合わせ」など、自然なカバーストーリーを用意しておくとよいでしょう。

資料のやりとりも、社内のネットワークやプリンターの使用には注意が必要です。

できるだけ個人のPCやクラウドストレージを使い、社内の共有環境には痕跡を残さないよう配慮しましょう。

DDで起こりがちなケースと対処法

ここでは、実際のDD場面で起こりがちなケースをいくつか紹介します。

事前に知っておくと、いざというときに慌てずに対応できるはずです。

ケース1:想定以上に資料請求が多い

DDが始まると、リスト形式で数十項目にわたる資料請求が届くことがあります。

初めて目にすると「こんなに必要なのか」と圧倒される経営者は少なくありません。

こういうときは、仲介者やアドバイザーに相談しながら優先順位をつけて対応するのがコツです。

すべてを一度に揃える必要はなく、重要度の高いものから順番に提出していけば問題ありません。

ケース2:過去の未払い残業代が発覚する

中小企業のDDでは、労務面の問題が見つかることが珍しくありません。

特に多いのが、未払い残業代の存在です。

自社では問題ないと思っていても、法的な基準に照らし合わせると未払いが発生しているケースは実際に多いと言われています。

こうした問題は、隠そうとするよりも、事前に自社で把握しておくことが大切です。

事前にわかっていれば、買い手への説明もスムーズですし、改善計画を提示することで信頼を損なわずに済みます。

ケース3:ヒアリングで答えに詰まる

経営者へのヒアリングでは、思いもよらない質問が飛んでくることがあります。

即答できない場合は、無理に答える必要はありません。

「確認してから正確にお伝えします」と返すのがもっとも適切な対応です。

曖昧な回答や、その場しのぎの発言は、後で矛盾が生じるリスクがあるため避けたほうがよいでしょう。

ケース4:買い手から追加の値下げ交渉がある

DDの結果を踏まえて、買い手から基本合意時の価格よりも低い金額を提示されることがあります。

これは珍しいことではなく、DDで新たなリスクが見つかった場合には十分にありえます。

このとき大切なのは、感情的にならず、減額の根拠を冷静に確認することです。

根拠が合理的であれば受け入れを検討し、不当だと感じる場合は仲介者やアドバイザーの力を借りて交渉していきましょう。

事前にネガティブ情報をきちんと開示しておけば、DDで新たに発覚する問題が少なくなるため、大幅な減額を防ぎやすくなります。

ここでも、誠実な開示が結果として自分を守ることにつながるんですよね。

おわりに

今回は、M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)の全体像と、売り手として押さえておくべき準備と対応の心得をお伝えしました。

改めて要点を振り返ると、以下のとおりです。

  • DDは買い手が弁護士や会計士を使って行う本格的な買収監査であること
  • 財務・法務・ビジネスなど、複数の領域が調査対象になること
  • 定款・株主名簿・月次損益・各種契約書などの資料を事前に整理しておくことが大切
  • 誠実な対応を貫き、ネガティブ情報も隠さず開示することが最大の防御策
  • DD期間中はスケジュールを柔軟に確保し、ヒアリングに積極的に応じる
  • 従業員への秘密保持には細心の注意を払い、情報漏洩を防ぐ

DDは確かに大変なプロセスですが、M&Aを成功させるために避けては通れないステップでもあります。

「何をされるかわからない」という不安は、事前準備をすることで大きく軽減できます。

大切なのは、誠実に、そして落ち着いて対応すること。

隠しごとをせずにオープンな姿勢で臨めば、買い手との信頼関係はむしろ強まっていきます。

焦らなくて大丈夫です。

この記事でお伝えした内容を一つずつ確認しながら、準備を進めてみてください。

DDを無事に乗り越えた先に、最終契約という大きな節目が待っています。

その日に向けて、今できることから着実に取り組んでいきましょう。

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税務に関する実務の勉強記録を残しています。法人税・所得税・消費税・相続税を中心に、業種別のビジネスについても学んでいます。 ※このサイトに記載している内容は、一般的な情報提供であり、個別具体的な事例に関する相談は専門家へご相談ください。
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