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所得税

狭い住宅でも使える?住宅ローン控除と税制優遇の「50㎡の壁」を解説

佐藤

東京都では土地・建築コストの上昇が続いており、30㎡台〜50㎡台のコンパクトな家(狭小住宅)がマイホームの選択肢になっています。

しかし——ほんの数㎡の違いで、住宅ローン控除などの税制優遇を受けられるかどうかが変わることをご存じでしょうか?

この記事では、狭小住宅を購入する際に押さえておきたい

  • 住宅ローン控除
  • 不動産取得税
  • 登録免許税の優遇制度

を中心に解説します。

狭小住宅が注目される背景

東京都の住宅地価格は、国土交通省の地価公示(令和6年)によると前年比+約5%。

東京では1㎡あたりの単価が100万円を超えるのは普通の時代になってきました。

注目されている!

「都内にマイホームを持ちたい」というファミリー層に注目されているのが、30〜50㎡前後の“狭小住宅”です。

  • “立地の良い場所”に住める
  • 住宅価額が安い
  • 固定資産税などのコストが安い

などのメリットなどがあり、特に住宅価格が上昇している今、住宅ニーズは確実に広がっています。

一方で、狭小住宅を購入する時に注意したいのが、税制上の面積要件です。

  • 「住宅ローン控除」
  • 「不動産取得税」
  • 「登録免許税」

これらはいずれも、50㎡未満の住宅は原則として優遇対象外となります。

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住宅ローン控除の「50㎡の壁」基本ルール

住宅ローン控除は、自宅を取得・新築した場合、年末時点のローン残高の0.7%を所得税・住民税から差し引ける制度です。

住宅ローン控除の主な要件

項目内容
控除率年末ローン残高の 0.7%
控除期間新築住宅13年間(認定住宅は上乗せあり)
対象住宅登記簿上の床面積が50㎡以上
所得制限合計所得金額2,000万円以下
ポイント解説
  • 登記簿上で 床面積が49.9㎡以下 の住宅は控除が基本的には使えません。
  • 狭小住宅で控除を受ける場合、この50㎡の基準が大きな分岐点になります。
Q
租税特別措置法施行令(条文)

(住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除)
第二十六条 法第四十一条第一項に規定する住宅の用に供する家屋で政令で定めるものは、個人がその居住の用に供する次に掲げる家屋(その家屋の床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら当該居住の用に供されるものに限る。)とし、その者がその居住の用に供する家屋を二以上有する場合には、これらの家屋のうち、その者が主としてその居住の用に供すると認められる一の家屋に限るものとする。
一 一棟の家屋で床面積が五十平方メートル以上であるもの
二 一棟の家屋で、その構造上区分された数個の部分を独立して住居その他の用途に供することができるものにつきその各部分を区分所有する場合には、その者の区分所有する部分の床面積が五十平方メートル以上であるもの

租税特別措置法施行令

40㎡〜50㎡の特例(所得1,000万円以下)2021年の改正で導入された緩和措置により、40㎡以上50㎡未満の住宅でも、合計所得金額が1,000万円以下であれば住宅ローン控除の対象になります。

(2) 特例居住用家屋または特例認定住宅等の場合
イ 住宅の床面積(注1)が40平方メートル以上50平方メートル未満であり、かつ、床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していること。
ロ この特別控除を受ける年分の合計所得金額が、1,000万円以下であること。

国税庁:タックスアンサー

ただし、この特例は「共働き世帯」では注意が必要です。

夫婦のどちらかが年収1,000万円を超えていると対象外になるため、ローンの組み方や登記名義を検討することが重要です。

ここを確認

「登記簿面積」で判断されるため、設計図上の“壁芯面積”よりも小さくなる設計段階でギリギリ50㎡を下回るケースも多く、早めの確認が必須。

Q
床面積の判定(補足)

床面積がこの要件に該当するかどうかは、各階ごとに壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積(登記簿上、表示される床面積。以下同じ。)によって判定することとされています(租税特別措置法関係通達41-10)。

区分所有する部分の床面積については、階段や廊下などの共用部分を除いた専有部分について、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積によって判定することとされています(租税特別措置法関係通達41-11)。

国税庁HPより

不動産取得税・登録免許税の軽減措置

住宅ローン控除だけでなく、購入や登記時にも税負担を軽減できる制度があります。
ただし、ここでも共通して立ちはだかるのが 「50㎡の壁」 です。

税目通常税率軽減後の税率・控除内容主な面積要件
不動産取得税建物3%・土地3%建物:1,200万円控除/土地:一定額控除50㎡以上240㎡以下
登録免許税保存登記0.4%/土地移転2%保存登記:0.15%/土地移転:0.3%同上(50㎡以上)
ポイント解説
  • 住宅ローン控除と同様、登記簿上の床面積が50㎡未満だと優遇の対象外になります。
  • 例えば、都内で建物価格が2,500万円の住宅を購入した場合、
     軽減措置の有無によって 十数万円〜数十万円の差 が生じることもあります。
東京都主税局HPより
Q
地方税法(補足)

(不動産取得税の課税標準の特例)
第七十三条の十四 住宅の建築(新築された住宅でまだ人の居住の用に供されたことのないものの購入を含むものとし、政令で定めるものに限る。)をした場合における当該住宅の取得に対して課する不動産取得税の課税標準の算定については、一戸(共同住宅、寄宿舎その他これらに類する多数の人の居住の用に供する住宅(以下不動産取得税において「共同住宅等」という。)にあつては、居住の用に供するために独立的に区画された一の部分で政令で定めるもの)について千二百万円を価格から控除するものとする。

地方税法:73条の14
茨城県HPより

不動産取得税は地方税になりますので、各都道府県から公表されている情報を参照する必要があります。

狭小住宅の購入難易度は上がる?

東京都は住宅価格が高止まりする状況で、狭小地を活用したコンパクト住宅や3階建て住宅のニーズが強まっています。

土地価格を抑えるメリットがある一方で、住環境や防災性、隣棟間隔の確保といった都市としての“質”をどう維持するかという課題に直面しています。

自治体によっては、過度な敷地分割が続くことで密集市街地が拡大し、通風・採光の悪化や、将来的な建て替えの困難さなどを懸念する声も強まっています。

そのため、都心の一部では「小規模宅地の再開発は進めつつも住宅地としての健全性を保つ」ことを目指し、細分化の抑制や、一定規模の敷地を確保するためのルールづくりを進める動きも見られます。

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まとめ

狭小住宅で損をしないための3つのポイント

  • 登記簿上の床面積が50㎡以上あるか設計段階で“登記面積”を意識しておく
  • 所得1,000万円以下なら40㎡特例を確認(夫婦合算年収や名義に注意)
  • 不動産取得税・登録免許税の軽減も同じ面積要件ローン控除とセットで検討するのが効率的
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税務に関する実務の勉強記録を残しています。法人税・所得税・消費税・相続税を中心に、条文・通達や実務処理の要点を整理しています。 ※運営者は税理士ではございません。 ※このサイトに記載している内容は、一般的な情報提供であり、個別具体的な事例に関する相談は専門家へご相談ください。
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